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コロナ禍におけるフレイル対策

コロナ禍におけるフレイル対策

令和3年8月1日 発行

新型コロナウイルスが中国の武漢で初めて報告されてからすでに1年半が過ぎようとしています。その間ウイルスは次々と変異し、私たちの生活はいまだに色々な自粛を強いられています。最近整形外科医として診療にあたっていると、患者さんから「このままの状況が続くとフレイルにならないか心配だ」という声を耳にします。今回はフレイルとは何か? どのような状態をさすのか? またフレイルと同様によく用いられるサルコペニアについても簡単に説明させていただきます。そしてコロナ禍が続くなか、どのようにフレイルに立ち向かっていけば良いのか私見を述べさせていただきます。

フレイルとは日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、「frailty(虚弱)」の日本語訳です。健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態を指します。簡単に言えば「加齢に伴って心と体の働きが弱くなってきた状態」と言えます。またサルコペニアとはギリシャ語で「筋肉」をあらわす「sarco(サルコ)」と「喪失」をあらわす「penia(ぺニア)」を合わせた造語で、筋肉量が減少して筋力低下や身体機能低下をきたした状態を指します。フレイルとサルコペニアは相関関係が深く、糖尿病に代表される生活習慣病・骨粗鬆症・運動器不安定症・認知症等の疾患と結びつきながら進行していきます。

フレイルチェックをやってみましょう。
□  体重が減った(半年で2~3kg減)
□  疲れやすくなった(わけもなく疲労感がある)
□  筋力の低下(階段を昇るのがつらい)
□  歩くのが遅くなった(青信号で渡りきれない)
□  活動性の低下(最近外出することが減った)

またイレブンチェックには栄養・口腔・運動・社会性からなる11項目があり、例えば口腔では「たくあんくらいの硬さの食品を普通に嚙み切れる」、社会性では「1日に1回以上は誰かと一緒に食事をしている」といった質問内容となっています。

フレイル予防には①1日3食バランスの良い食事 ②筋肉トレーニング(ウォーキング・体操・水泳等)③社会とのつながり が特に重要です。

整形外科領域では膝痛・腰痛の多くは体重増加が原因です。私はそのような患者さんに1日の食事内容をおやつも含め全てノートに記載してもらっています。もちろん体重計測も。すると炭水化物の摂取量に比べてタンパク質の摂取量が少ない事がよく解ります。日々の食事を見直す事は大変重要です。また記載する事は物忘れ防止にも役立ちます。これは体重減少が問題のフレイル予防にも当てはまります。

筋トレはつま先立ち訓練を勧めています。室内で一人でも簡単に行え、下腿の筋力強化になります。またテレビのラジオ体操もお勧めです。座って行ってもかまいません。できれば生放送で声を出しながら体操しましょう。孤独と感じず、ぜひ自己を楽しんでください。

社会とのつながりについては友人との食事やカラオケ、地域のボランティア活動等が推奨されていますが、いずれもコロナ禍では実行困難な状況です。たとえ外出が制限されていても対面困難であっても、スマホ等を積極的に活用し日々の対話を絶やさず情報交換する楽しみをみつけていく事が重要です。若者に負けてはいられませんよ。さっそく今日から始めましょう。

(Y・S記)

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