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胃がんリスク検査について

胃がんリスク検査について

平成29年8月1日 発行

ピロリ菌という名前を聞いたことがありますか?胃に長年にわたってすみつく細菌で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因はこれです。

このピロリ菌が、胃がんの原因でもあることがわかってきました。ピロリ菌がいる人の方が胃がんになるリスクが高いのです。ピロリ菌に感染しているかどうかを調べれば、胃がんになりやすい体質かどうかがわかります。

しかしピロリ菌に感染している人が全員胃がんになるわけではありません。そこで他の検査で補い、より正確にリスクを予測します。

ピロリ菌に長年感染すると、胃の粘膜はだんだん薄くなります。この状態を萎縮性胃炎といいます。いわば胃がんの「前がん状態」です。萎縮性胃炎かどうかは血液検査でペプシノゲンという物質を調べるとわかります。胃粘膜が萎縮するとペプシノゲンが少なくなるのです。そして胃粘膜が萎縮するほど(すなわちペプシノゲン値が低下するほど)胃がん発生の可能性は高くなるのです。

胃がんリスク検査とは、ピロリ菌感染の有無(血清ピロリ抗体値)と胃粘膜萎縮の程度(血清ペプシノゲン値)を測定し、被験者が胃がんになりやすいかどうかをA〜Eの5群(正確にはA群陰性高値を含めて6群)に分類する検査法です。

ピロリ菌は幼少期にしか人に感染できません。幼少期に感染しなかった人は、大人になってから感染することはないので一生涯ずっとA群のままです。感染した人はB群となります。このままずっとB群の方もいますが、人によってはその後数十年(人によって異なります)が経過すると、胃粘膜の萎縮が進みC群となります。さらに胃粘膜の萎縮が極端に進んだ場合には、ピロリ菌自体が生きていけなくなってしまい、胃粘膜からいなくなってしまいます。この状態がD群です。D群が最も胃がん発生の可能性が高く、C群、B群の順に胃がん発生の可能性が高いことが知られています。なおA群は最も胃がん発生の可能性が低いのですが、ゼロではないので、A群だからといって「絶対に胃がんにはならない」とは思わないでください。

胃がんリスク検査はがんそのものを見つける検査ではありません。胃がんになりやすい体質かどうかを調べる検査です。目黒区では平成20年に、東京都では初めて、胃がんリスク検査を区民検診に取り入れております(昨年までは胃がんハイリスク検診という名称でした)。その後現在では都内25区市町村(すなわち約半数の区市町村)で導入されるようになりました。

5年に1回、節目年齢のときに受けることができます。胃がんになりやすいと判定された場合には、胃がんの存在を確かめる精密検査(胃内視鏡検査等)の受診をお勧めいたします。

医学は進歩しています。最新の医学をもとにした新しい検査をどうぞご利用ください。

総合判定区分

(H・N記)

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