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乳がんの現状

乳がんの現状

平成28年10月1日 発行

乳がんが増えています。テレビやニュースで話題となり、知り合いが精密検査を受けたといった話を聞くなど、とても身近な関心事です。

いまや日本全国で、1年間に約8万人が新しく乳がんになっていて、女性が罹るがんの第一位です。そして、全国都道府県の中でも、東京都が突出して多いことが分かってきました(国立がん研究センターからの発表)。無論、そこには私たちの目黒区も含まれています。

なぜ東京で、そんなに多くなっているのでしょうか。出産や授乳の経験がない女性では、乳がんになるリスクが高まると言われています。女性の、いわゆる都会型のライフスタイルにより出生率が低くなり、それが乳がんの罹患率を引き上げる要因の一つと考えられています。言い換えると、昔のように若い年代から子どもを多く産んで授乳をしていた時代の方が、乳がんは少なかったのです。出産と授乳をすることで、乳腺の細胞・組織が十分に成長・分化を遂げて、さまざまな発がん刺激に対して強くなるためと考えられています。

発がんは様々な要因が重なって起こると考えられますが、発がん刺激の代表は、何といってもタバコの喫煙です。タバコは肺がんの原因だけと思ったら大間違いで、乳がんの発症リスクにもなりますし、多くの生活習慣病の一因となります。吸う本人への影響(一次喫煙)だけでなく、周りの人が煙を吸い込む受動(二次)喫煙、そして煙から出た有害物質が服や室内の物の表面に残り、そこから危険がさらに広がる三次喫煙(残留受動喫煙)までありますので、まさに百害あって一利なしです。本人だけでなく周りの人にとっても、発がん予防と健康維持に役立ちますので、タバコは吸わないようにして下さい。

さて、乳がんが増えている今日、何に注意をするべきでしょうか。出産授乳のほか、血縁の近い人に乳がんがいるなどのリスクの話はありますが、いつ誰が乳がんになるのかを言い当てることは出来ません。幸い乳房は他の内臓と違い、自分で見て触ることが出来ますので、詳しくは分からないにしても、何か変わったことがあった時には自分で気づくことが可能です。ちょっとした形の変化・大きさの違い・部分的に強い手応え・乳頭からの分泌物などに注意が必要です。もしなったとしても、早く見つかり適切な治療を行なうことで、多くの乳がんは治りますので、普段から注意をしておく甲斐がある病気と言えます。

早期発見・早期治療をするべく、目黒区では40歳以上の方を対象に、マンモグラフィを用いた乳がん検診を行っています。平成27年度では、約8千人の方が受診をされて、48人の乳がんが発見されています。乳がんの発症年齢の分布を見ると、30歳代の後半から増えてきますので、区の検診以外でもお勤め先の健康診断や一般の人間ドック等、どのような形でもよいので定期的なチェックを受けることをお勧め致します。また、40歳以上の方の検診でマンモグラフィが有効であることは広く認められていますが、20歳代・30歳代を含め乳腺がよく発達している方では乳腺全体が白く濃く写ってしまい、しこりを十分に見極めきれないことがあります。そのような場合には、超音波検査の方が良いと考えられています。

いろいろと注意するべきことはありますが、ちょっとでも気になること・心配なことがありましたら、まずは、かかりつけ医に相談をして診てもらい、乳腺科・乳腺外来を受診されて下さい。

(G・T記)

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