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胃アニサキス症

胃アニサキス症

平成27年10月1日 発行

食欲の秋を向かえ、海産物を含めた秋の味覚に舌鼓を打ちたくなる季節となりましたが、今年の7月8日から、米国、ニューヨークの寿司店では、養殖魚やマグロの一部を除いた寿司ネタと刺身はマイナス35度以下の低温で冷凍しなければならないという衛生基準が導入されたことをご存知ですか。これは魚に寄生している寄生虫による食中毒を予防する目的で行われることとなったようですが、その中心的存在はアニサキスという寄生虫です。

 

魚を生食する機会が多い日本では、以前から特にサバ、イワシ、アジ、スケソウダラ、スルメイカ、カツオなどの魚に、アニサキスという寄生虫の幼虫が寄生していることがあり、それを生で摂取してしまった場合、数時間後に急激な上腹部痛や嘔吐の症状で「胃アニサキス症」として発症してくることが知られています。
この寄生虫は、イルカ、クジラ、アザラシなどの海生哺乳類が最終宿主で、その胃などに成虫が寄生して、虫卵、幼虫が海水中に排泄され、それをオキアミなど甲殻類が捕食し、その後、前述の魚類に食物連鎖の中で寄生することになります。

 

予防としては、海産魚介類を加熱後に摂取すること、また冷凍処理後に解凍して摂取することが有効とされています。しお、醤油、酢などの調味料では死滅することはありませんので、しめサバなどでも感染することがあります。

 

アニサキスの幼虫がヒトの胃の中に入ると、胃壁への刺入を繰り返すことが知られており、そのために激しい痛みが起るとされていましたが、アニサキスに対するアレルギーによって痛みが生じている可能性が示唆されています。治療としては診断も含め、胃内視鏡検査にて虫体を摘出することが最良ですが、もしできない場合でも、抗ヒスタミン剤などの抗アレルギー薬が有効なことがあります。

 

ヒトが最終宿主ではないため、約1週間でアニサキスの幼虫は人に寄生することなく胃内で死滅しますが、まれに胃から十二指腸へ侵入し腸閉塞を引き起こし、外科的処置が必要となることもあるため「胃アニサキス症」が疑われた場合、最寄りの医療機関を受診し、上部消化管内視鏡検査を受けることをお勧めします。

(Y・I記)

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