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ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドローム

平成25年12月1日 発行

ロコモティブシンドロームは日本語にすると「運動器症候群」と言い、メタボリックシンドロームを意識してつくられた言葉です。

メタボリックシンドローム(メタボ)は高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満が重なると、その病気単独の時よりも寿命を縮めるため、注意を喚起するためにつくられた言葉です。健診の中にはメタボ健診と謳っているものもあり、メタボリックシンドロームはすでに、一般の人々に浸透した言葉となっています。

ロコモティブシンドロームは運動器の障害に注目してもらいたいために、2007年に日本整形外科学会が提唱した言葉です。メタボにならって、略称を「ロコモ」と呼んでいます。運動器とは、骨や関節、筋肉や神経など、体と動かす仕組みの総称です。自動車にたとえるなら、エンジンやタイヤのようなものです。

我が国では、65歳以上の人口は平成22年の時点で23%を超え、平均寿命は男79歳、女86歳となっています。しかし、日常生活に制限なく、自立した生活が送れる期間(これを健康寿命と言います)は男70歳、女74歳で、平均寿命との差は男9年、女12年となり、この10年でむしろ拡大する傾向にあります。自立した生活が送れなくなると、要介護状態となるわけですが、そうなった方の約5人に一人が運動器の障害が原因となっています。このことは多くの人にとって骨や関節などの運動器の健康を保つことが困難となってきていることを意味します。長寿に運動器の健康が追いついていないのです。

運動機能の低下が徐々に進行することが多いため、足腰が弱っていることに自分で気づくことが大切です。自己チェックのために、「ロコチェック」と称して、7つの項目が提唱されています。1)片脚立ちで靴下がはけない、2)家の中でつまづいたり滑ったりする、3)階段を上がるのに手すりが必要である、4)家のやや重い仕事が困難である、5)2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である、6)15分ぐらい続けて歩くことができない、7)横断歩道を青信号で渡りきれない。この中の一つでも当てはまることがあれば、ロコモが始まっている危険があります。

運動機能を低下させる代表的な病気には骨粗鬆症、変形性膝関節症、変形性脊推症があります。骨粗鬆症は骨が弱くなり、骨折を起こしやすくなります。変形性膝関節症は膝の軟骨がすり減って、歩くのに杖が必要となります。変形性脊推症は骨が神経を圧迫して坐骨神経痛を起こします。これらはどれも、痛みのため体が思うように動かせなくなり、自立した生活を脅かしてきます。

ロコモの危険がある方は、何がロコモの原因になっているか、それを整形外科で診断してもらう必要があります。

ロコモの心配のある方、ロコモと診断された方、には足腰をしっかりさせるためのトレーニング(ロコモーショントレーニング:ロコトレ)が用意されています。ロコトレを行い、いつまでも自分の脚で歩き、人の世話にならない自立した生活を送り、健康寿命を延ばしたいものです。

(K・W)

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