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小児のアレルギー疾患 スギ花粉症と食物アレルギー

小児のアレルギー疾患 スギ花粉症と食物アレルギー

平成23年2月1日 発行

近年アレルギー疾患が増加しています。
 国民のほぼ30パーセントがアレルギー性鼻炎に罹患、通年性アレルギー性鼻炎の人の70パーセント位が学童期までに発症、今年は多量(昨年の数倍と言われています)に飛散すると予測されているスギ花粉症には国民の25%以上が罹っているようです。以前は幼児にスギ花粉症はほとんどいないといわれていましたが、最近スギ花粉の季節になると鼻水、鼻づまり、目のかゆみで小児科や耳鼻科の外来を受診する子どもが珍しくなくなりました。

三重大学の調査によれば、CAP・RASTという抗原感作の検査でスコアー2以上を陽性とした時、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギーなどのアレルギー性疾患を有する子どもでは、47%の人がスギ花粉に陽性を示し、年齢3歳から5歳で陽性になる子どもが増加した、最年少は23ヵ月、アトピー性皮膚炎の男児だったということです。一方アレルギー性疾患のない子どもではスギ花粉に陽性を示したのは19.9%、陽性になる率もゆっくりだったという結果でした。

晴れた春の日に子どもを元気に外で遊ばせたいところですが、多量に飛散するスギ花粉から子どもを守るには帽子、ゴーグル、マスク、抗アレルギー薬などを適切に使用する必要があるでしょう。小学生ならゴーグル、マスク、帽子を使えますが、幼児にはまだ無理かもしれません。花粉飛散量の多い日は室内遊び中心の生活にするのもやむをえないでしょう。

最近の小児アレルギー性疾患のなかで治療法に変化がみられるものに、食物アレルギーがあります。乳児の5~10%に食物アレルギーがあるといわれ、アトピー性皮膚炎を契機として食物除去の指導が行われていますが、最近これに対して批判的な研究結果が出て来ました。

日本小児科学会雑誌2010年5月号で神奈川県立こども医療センターアレルギー科の栗原和幸氏は、「食物アレルギーの積極的治療の可能性」という題で安易な食物除去の指導は食物アレルギーを悪化させる危険性も考えられると言っています。そしてアレルゲンとなる食物を積極的に摂取して食物アレルギーを治療する試みを紹介しています。

それを可能にしているのが経口免疫寛容という現象で、異種タンパクを注射する前に経口で投与しておくと、注射後の反応を軽減できるという動物実験結果で明らかになったことです。ヒトの食物アレルギーでは動物実験の結果をそのまま応用できませんが、その原理を基に食べて治すという試みが増えて来ました。しかし食物アレルギーではアナフィラキシーという重篤で命にかかわる反応を起こすことがありますので、自宅で自己流に食べて治そうということは危険です。現在まだまだ検討段階の試みと言えますので、誰にいつ頃どのように治療するのが適切なのか、慎重に対処していくべきと思います。とにかく主治医の指示により、場合によっては入院の上慎重に行う治療です。

血液や皮膚を用いたアレルギー検査の結果を根拠にした場合、必要以上に食物除去をしてしまう可能性があり、さらに過剰な除去により食物アレルギーの予後を悪化させているかもしれません。この分野では1日でも早くさらに適切な治療が確立されるよう期待したいところです。

(K・N)

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