がんを予防するワクチン
がんを予防するワクチン
令和6年12月1日 発行
日本人のがんの約20パーセントは感染が原因
国立研究開発法人がん研究センターの「がん情報センター」によれば、がんの原因はさまざまな要因がわかっています。要因の一つとしてウイルスなどによる感染があり、がん罹患の約20を占めると推計されています。肝炎ウイルスが肝がんの原因になっていることは今では医学的に立証されており、B型肝炎感染を防ぐ効果のあるワクチン接種が2016年から定期接種として実施されています。他にも罹患と強く結びつけられているウイルスとしてヒトパピローマウイルス(HPV)があります。 HPVは子宮頸がんをはじめ、肛門がん、膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマの原因の多くを占めています。子宮頸がんは近年若い女性の罹患が増加しているためにその対策として、HPVワクチン接種が世界的に推奨されています。HPVワクチン接種が最も進んでいる国としてオーストラリアがあります。2007年から国を挙げてワクチン接種を推進したことにより将来的には子宮頸がんの罹患率が10万人に一人未満になると予測されています。一方で日本では年間約1万人が子宮頸がんに罹患し、残念なことに約3000人程度の方が亡くなっています。この状況を改善するために日本ではHPVワクチンは、2013年4月に女性を対象として定期接種化されたことによって子宮頸がんに罹患による死亡者を減らすことが期待されています。
男性のHPVワクチンに期待できること
海外のデータでは女性のHPV感染率は24歳以下では50%程度ですが、男性は60%を上回るとの報告もあります。日本人の場合、HPVは子宮頸がんを引き起こすだけではなく、尖圭コンジローマの95%、肛門がんの87%の原因となっていることが知られています。これらの疾患に対する日本で実施された治験による男性に対するワクチン接種効果は、ワクチン接種をした497人中肛門がんの発生は3人、ワクチン接種をしなかった498人は21人となり、高い予防効果が報告されています。
目黒区では男性へのHPVワクチン任意接種が無料
世界的には60以上の国と地域で男性に対してHPVワクチンが公費助成が行われています。
国別・地域別でワクチン接種の対象者に違いはありますが、日本でも多くの自治体でHPVワクチンが公費助成が行われるようになりました。目黒区でも小学校6年生から高校1年生までの男性を対象とした、4価HPVワクチンが接種完了する3回まで無料で行われていることは、残念ながら広く知れ渡ってはいない印象があります。使用する4価ワクチンはHPV6型、11型、16型、18型のウイルス感染を予防する効果があります。接種間隔は1回目から2回目は2ヶ月、3回目は1回目から6ヶ月後です。無料で行うことができる助成制度は目黒区内の実施医療機関のみであり、事前に接種を受ける区内実施医療機関に接種希望であることを伝え予約を取る必要がある点にご注意ください。
(K・O記)