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フルミスト(インフルエンザ生ワクチン)について

フルミスト(インフルエンザ生ワクチン)について)

令和6年10月1日 発行

インフルエンザの予防接種といえば、注射で行うのが一般的でした。今シーズンから使用開始が決定したフルミストとよばれる新しいインフルエンザワクチンは経鼻弱毒性生インフルエンザワクチンです。経鼻とあるように投与は注射ではなく鼻への噴霧になります。

注射で投与するインフルエンザワクチンは不活化ワクチンとよばれ、病原性(毒性)を完全になくしたものです。一方生ワクチンとは生きたウイルスや細菌の病原性を極力抑えて(弱毒性)、免疫が作れるぎりぎりまで毒性を弱めた製剤です。安全性という意味では不活化ワクチンになりますが、効果の点から考えると生ワクチンに軍配があがります。現在使用されている主な生ワクチンはBCG、麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜなどがあります。

フルミストはアメリカでは2003年より使用され、欧州でも2011年から使用されはじめました。日本では認可されていなかったため、今までいくつかのクリニックではフルミストを個人輸入し患者さんに使用していました。

今回2016年に国内のメーカーがフルミストの承認申請を行い認可され、今シーズンよりいよいよ使用開始になります。国内メーカーが発売元となりますが、ワクチンの製造自体は英国の製薬会社が行います。

このワクチンの特徴は「大人よりも子供で効果が高い」ことです。子供の場合、鼻から入ったフルミストは鼻の奥(上咽頭)の粘膜上できわめて軽い「局所感染」をおこします。インフルエンザに軽くかかったような状態になるため強力な免疫・抗体が獲得され、その結果として感染防止に高い効果が期待できます。

これに対して大人はインフルエンザを含め様々な感染症を経験していますから、すでに上咽頭の粘膜上に十分な免疫があります。その既存の免疫が鼻に噴霧されたフルミストをブロックしてしまうため、結果としてワクチンの効果が子供より期待できないと考えられています。

以上のことなどを考慮し、今回日本ではフルミストの接種対象者は2~18歳に限定されました。19歳以上の方は、今まで通り注射による不活化ワクチン接種が推奨されています。

接種は原則1回です。ただし、2~8歳でインフルエンザワクチンを1回も受けたことがない人は免疫獲得を確実にするために、1ヵ月間隔で2回接種が勧められています。

効果ですが、今までの不活化ワクチンと比較した明確なデータの報告はありません。しかし、今まで個人輸入でフルミストを使用してきた医療機関からは、不活化ワクチンよりかなり予防効果が高いといった感想が多く聞かれます。

また注射による不活化ワクチンの効果持続は4か月程度とされていますが、フルミストはほぼ1年効果が持続するのも特徴の一つです。

何よりも一番のメリットは注射ではないことでしょうか。どうしても注射が苦手なお子さんや受験生の方にはお勧めかと考えます。

副作用として最も多いのが鼻水、鼻づまり、咳、咽頭痛といった風邪症状で、その他発熱、倦怠感などが報告されています。また妊娠中の方、ステロイド・免疫抑制剤・アスピリンを使用中の方、過去にけいれんの既往がある方等は接種できません。今年からの開始ということでまだ流通量が十分ではなく、今シーズンは数が限られそうです。接種ご希望の方は早めに医療機関へ問い合わせするとよいでしょう。

(W・M記)

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