最近のワクチン事情について
(特に肺炎球菌ワクチンとRSウイルスワクチン)
最近のワクチン事情について
(特に肺炎球菌ワクチンとRSウイルスワクチン)
令和6年8月1日 発行
乳児を持つ保護者の⽅はご存知かと思いますが、肺炎球菌ワクチンは13価から15価に変わりました。つまり⾎清型が⼆つ多くなりより多くの型による感染を予防する事が出来るようになりました。さらにこの15価肺炎球菌ワクチンは、⾼齢者や肺炎球菌に罹患する可能性の⾼い成⼈にも任意接種が出来るようになりました。
肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌によって発⽣する病気です。その多くが乳幼児で発症し、肺炎や髄膜炎や中⽿炎を引き起こします。中でも髄膜炎は重症な病気で、2%の⼦供が亡くなり、10%程度に精神発達遅滞や⿇痺などの障害を残すと⾔われています。厚⽣労働省のホームページによれば、2022年の発症は髄膜炎を含む重篤な肺炎球菌感染症は10万⼈当たり4・8⼈程度で、肺炎ワクチンが定期接種となる2008年から2010年と⽐較して8割程度減少していました。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重い感染症である細菌性髄膜炎や菌が⾎液に⼊ってしまうような病気を95%以上防ぐ事が出来ます。⼩児では初回免疫として27⽇以上の間隔を空けて3回、さらに追加免疫として3回⽬から60⽇以上空けて1回を接種します。また成⼈では通常1回の接種となりますが、⾎液疾患等の治療後は別のスケジュールとなります。すでに⾼齢者では23価の肺炎球菌ワクチンであるニューモバックスとの接種間隔ですが、⽇本感染症学会によれば、23価未接種の⽅では15価接種後1―4年を空けて23価を接種する。すでに23価を接種済みの⽅では1年以上を空けて15価を接種する事を考慮する事になっています。
また最近のニュースでもありましたがRSウイルスワクチンの⼤⼈への接種が始まりました。
妊娠24〜36週の妊婦さんと60歳以上の⽅を対象とするワクチンです。皆様もご存知の通り、RSウイルスは乳幼児に重篤な肺炎を引き起こす感染⼒の⽐較的強いウイルスです。保育園などでの流⾏をしばしば経験します。感染すると⿐汁のような軽い症状から始まり発熱、喘鳴などが起こり時には酸素濃度が低下してしまうような重症の肺感染症に移⾏して⼊院となる事もあります。特効薬はありません。そこで、お⺟さんのお腹の中に居るうちに、妊婦さんに接種する事が勧められ、⽣後3ヶ⽉以内で発症を予防する効果が57・1%、重症化を予防する効果は81・8%。⽣後半年以内で発症を予防する効果が51・3%、重症化を予防する効果は69・4%との結果が出ています。⼤⼈の多くはRSウイルスに罹患しても⾵邪で済みます。しかし⾼齢者や喘息のある⼈、慢性の呼吸器疾患のある⼈、⼼臓の病気のある⼈、免疫の低下している⼈などでは、肺炎となり重症化し年間約4500⼈程度が死亡すると⾔われています。
2023年9⽉に60歳以上を対象とするワクチンが発売され、1回の接種で約2―3年効果が持続されると⾔われています。
接種⽅法は妊娠24〜36週の⽅では1回接種します。また60歳以上の⽅も同様に1回接種を⾏います。
最後に5種混合ワクチンについてお話しします。
本年4⽉1⽇から5種混合ワクチンが定期接種として使⽤できるようになりました。
4種混合ワクチンとして広く接種されていましたジフテリア、百⽇咳、破傷⾵、ポリオの混合ワクチンにヒブワクチンが加わったものです。これまでは2本の接種であったものが1本で済むことになり、また接種期間も統⼀されたため児への負担も軽減されました。定期接種対象者は、⽣後2ヶ⽉から90ヶ⽉に⾄るまでです。接種スケジュールは、初回接種を⽣後2ヶ⽉から⽣後7ヶ⽉までの間に開始し、20⽇から56⽇の間隔を空けて3回接種します。さらに追加接種として、初回接種終了後6ヶ⽉から18 ヶ⽉までの間隔を空けて1回接種します。
ワクチンは重症化する可能性のある疾患を予防するために必要なものです。是⾮主治医の先⽣と相談の上、接種をご検討下さい。