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ヤングケアラー

ヤングケアラー

令和6年6月1日 発行

一昔前のテレビドラマでは、幼い兄弟を背負って世話をしながら学校へ行ったり、病弱な親の看護を献身的にやるようなものがありました。その時、昭和生まれの自分自身はこれといった違和感もなくテレビを観ていました。今となってはあのテレビドラマの中の子供たちはまさにヤングケアラーの一種であったのでは?と思いますが、当時は問題視されていませんでした。

ヤングケアラーとは「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子供・若者」と定義され、社会問題として取り上げられるようになったのは2015年ころです。家族のケアやサポートのために、教育をうける権利、休み・遊ぶ権利、意見を表す権利、健康・医療への権利、社会保障を受ける権利等が侵害されてしまいます。その責任や負担の重さにより、学業や友人関係に影響が出てしまうことがあります。

ヤングケアラーの実態ですが、ある報告では世話をしている家族がいると答えた小学6年生は約6.5%、中学2年生は約6%、高校2年生は約4%でした。世話の頻度は“ほぼ毎日”が3~6割、世話に費やす時間は3時間程度でした。問題なのはヤングケアラーと自覚している子供は約2%にとどまり、1~2割の子供は「わからない」と回答。さらに8割以上の子供が「ヤングケアラーという言葉を聞いたことがない」と回答しています。世話をさせている親にもヤングケアラーという概念が乏しく、ある調査では保護者の9割が“自分の子はヤングケアラーではない”と回答しており、問題が表面化してこない要因のひとつと思われます。家の手伝いや親・兄弟の面倒を見るというのは家族としてある程度は必要なことですが、どこまでが常識的な範囲で、どこから先がヤングケアラーになるのか難しい問題だと思われます。

2024年には政府がヤングケアラーの支援を法制化する見通しです。対象年齢も以前は児童福祉法に合わせて18歳未満をヤングケアラーとしていましたが、18歳以上になっても進学や就職に影響が続くと判断し、おおむね30代までを支援の対象とすることが法制化されそうです。

地域で関係機関が緊密に連携し、ヤングケアラーに早く気付くとともに見守り・寄り添いや具体的な支援につながるよう、現在東京都では“ヤングケアラー支援マニュアル”を製作しており、各自治体で配布しています。もっとこの問題が広く認識され、子供たちが心身ともに健康な生活を送れるよう支援が広がることを期待します。

(W・M記)

東京都ヤングケアラー支援マニュアル

東京都ヤングケアラー支援マニュアル(令和5年3月発行)

東京都福祉局のサイトよりダウンロードできます。下記の二次元コードもしくはURLよりアクセスください。

東京都ヤングケアラー支援マニュアル

「ヤングケアラー支援マニュアル」東京都福祉局

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/young-carer.html

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