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脚を鍛えて、元気に生き抜きましょう!

脚を鍛えて、元気に生き抜きましょう!

令和6年4月1日 発行

本年一月一日発災の能登半島地震はまだまだ先が見えないままで、これからも大変な日々が続きます。被災された方々に、日々のわずかな時間でも心を寄せ、自分ができることを考え続けましょう。

同時に、私たちが今すべきことがあります。それは、目黒区が被災しても、皆様が「すこやか」に過ごすための準備です。

被災すると厳しい現実が待っています。水がこない・下水が流せない、電気がつかない、スマホがつながらない、冷暖房機器が使えない、などなどピンチの連続です。家が傾いて住めないかもしれません。

生活がままならない、という激変した状況に晒されると、様々な心身の不調が顕わになります。心筋梗塞・脳梗塞や誤嚥性肺炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、深部静脈血栓が原因の肺梗塞、など命に関わる疾病に襲われる可能性が高まります。

今回は、馴染みの少ない「深部静脈血栓」という病気についてご説明をいたします。『メルクマニュアル家庭版』によると、静脈には皮膚の表面に見える表在静脈と筋肉の中や骨の近くにある深部静脈の2種類があります。

特に脚の中心にある深部静脈に血栓ができて詰まった状態が「深部静脈血栓症」です。その結果、足に流れてきた血液の心臓への戻りが悪くなり、ふくらはぎや太もものむくみや痛みが起こります。血栓の一部が剥がれて流れていくと、心臓を通過した先の肺の動脈が詰まって「肺梗塞症」という命に関わる病気を発症する可能性があります。

血栓ができる理由に、①喫煙習慣や脱水など「血液が固まりやすい状態」と、②長期間にわたって脚を動かさないことで起こる「血流速度の低下」があります。特に被災後には、避難先で寝たままでいる、車中泊で脚が下がったままになる、などで②の状況が非常に起こりやすくなります。

「動かない」という状況は、深部静脈血栓症だけでなく、廃用症候群というお尻と下肢の筋肉の萎縮も起こします。すると食欲がわかずさらに動けなくなる、という悪循環に陥ります。

この「動かない・動けない」の状況に一度陥ると抜け出すのは大変です。しかし、避けるための方法があります。それは、その場で足踏みをする、できれば散歩する、ことです。脚は「第2の心臓」と言われるぐらい全身に血液を回すために大切な部分です。普段から歩く習慣を身につけておくことは、被災時のみならず、毎日の健康維持にも役立ちます。是非、散歩に出て、梅・桜・新緑を愛でてください。

骨表在静脈と深部静脈

(N・Y記)

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