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新型コロナウイルス後遺症について

新型コロナウイルス後遺症について

令和5年8月1日 発行

新型コロナウイルス感染症は5月8日に感染症法上の取り扱いが2類相当から5類へ変更され、季節性のインフルエンザと同等の扱いとなりました。

5類になったため毎日の感染者数の発表がなくなり、かえって周囲の感染状況が実感できなくなりました。5類移行後もじわじわとコロナの患者さんが増えているなというのが医療現場の実感です。

新型コロナウイルスのひとつの特徴として、今までの普通の感染症と違いかなりの頻度(報告によって様々ですが、患者さんの50~70%)で後遺症が生じることがあげられます。後遺症は男性より女性、高齢者、基礎疾患のある方に生じやすいとされています。後遺症はコロナ感染直後から発症する方もいれば、感染してから2~3か月後に発症するケースもあり様々です。

主な後遺症は倦怠感、咳、嗅覚・味覚障害、脱毛、ブレインフォグ(記憶障害、集中力不足、精神的疲労)、頭痛、筋力低下、筋肉痛、抑うつ、慢性的な疲労感等多岐にわたります。後遺症は時間の経過とともに軽快することが多いのですが、なかにはかなりの長期にわたって症状が続き日常生活に大きな支障をきたし、止む無く仕事を辞めざるを得ないような方もおられます。

当初、このような後遺症に対して明確な治療法はありませんでしたが、経験を重ねるうちに少しずつ治療法も分かってきました。治療は各医療機関によってさまざまなアプローチがされています。共通するのは十分な休養とバランスのとれた食事です。適度な水分・ミネラル・ビタミンの摂取が大事な一方、加工食品や人工的な食品添加物は避けるべきと言われています。薬物療法としては漢方薬が症状に応じて使われることが多いようです。その他に主に耳鼻咽喉科で行われている上咽頭擦過療法があります(Bスポット療法、EATと呼ばれることもあります)。上咽頭とは鼻の一番奥の突き当りのことで、ウイルスや細菌、異物から体を守る免疫機関としての役割があります。上咽頭擦過療法とはこの上咽頭に薬物を塗布する治療法で、ブレインフォグ、倦怠感、睡眠障害等といった後遺症に効果があると言われています。またrTMS治療(反復経頭蓋時期刺激療法)という、もともとはうつ病患者さんの治療に行われてきた治療法も行われています。ブレインフォグの患者さんの脳血流を測定すると、脳の一部に血流低下が認められることがあります。このような患者さんに対してrTMS治療を行い、脳を活性化させることで症状改善をうながす方法です。ほかに高圧酸素療法も有効といわれています。新型コロナウイルスワクチンと後遺症の因果関係ですが、2回以上ワクチンを受けた方は後遺症にかかりづらいとされています。ただし、後遺症になってしまってから後遺症治療目的にワクチンを打つことの有効性は確認されていません。2022年9月より、後遺症の患者さんを受け入れる医療機関の登録が始まりました。現在、東京都福祉保健局のホームページの「コロナ後遺症対応医療機関」に医療機関マップがあり、地域別ならびに症状別に医療機関を検索することができますので、後遺症でお悩みの方は参考にされてみてください。新型コロナウイルス感染症の大きな波は収まりつつあります。今後はコロナ感染急性期の対応もさることながら、後遺症の治療が課題になっていくものと思われます。

(W・M記)

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