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不妊治療の保険適用について

不妊治療の保険適用について

令和5年2月1日 発行

令和4年4月から、不妊治療が保険適用されました。

それまでの不妊治療は、タイミング法は保険適用でしたが、人工授精・生殖補助医療におきましては全て自費診療でした。国の審議会(中央社会保険医療協議会)で審議された結果、有効性・安全性が確認された治療として、保険適用される事となりました。一般不妊治療として「タイミング法」「人工授精」があり、生殖補助医療として「採卵・採精」「体外受精・顕微授精」「受精卵・胚培養」「胚凍結保存」「胚移植」がありますが、それらが保険適用化された事となります。

⚫️保険適用されたメリット

・窓口での負担額が治療費の3割となります。

・治療費が高額な場合の月額上限(高額療養費制度)、条件が揃えば利用可能となりました。

・全額自費の場合と違い、3割負担の分、生殖補助医療に対するハードルが下がります。

⚫️保険適用される為の条件

・全員が生殖補助医療の保険適用を受けられる訳ではありません。治療開始において、女性の年齢が43歳未満である事。

初めての生殖補助医療治療開始時点の女性の年齢が40歳未満であれば、胚移植において通算6回まで(1子ごとに)可能。

40歳以上43歳未満であれば、胚移植において通算3回まで(1子ごとに)可能で、43歳以上の方には保険適用化は使えないという年齢制限が入る事となりますので、生殖補助医療をお望みになる43歳以上の方、年齢で分けられた胚移植の通算回数を超えた方は、全額自費での治療となります。

⚫️保険適用されたデメリット

・保険診療には守らなくてはならない規定があります。保険適用の範囲を超えての治療は出来ません。経膣超音波検査の回数や、排卵誘発に使う注射の量やお薬の種類や量などにルールがありますので、保険適用の範囲内での治療となります。

・多嚢胞性卵巣症候群の方の場合は、保険適用範囲内ですと、質の良い卵子を確保する事が難しくなります。

・43歳を超えてから不妊治療を受けたいと思った方には、生殖補助医療の保険適用がなされませんので、不公平さを感じる方々も出ておられます。

・計画的な医学管理を継続して行い、かつ療養上必要な診療・指導を行う事となりました>為、一般不妊治療を受けられる方には「一般不妊治療管理料250点(3月に1回)」、生殖補助医療を受けられる方には「生殖補助医療管理料300点または250点(月に1回)」が保険で加算されるしくみとなりました。担当医師は、当該患者様およびそのパートナーの病態、就労の状況を含む社会的要因、薬物療法の副作用や合併症のリスクなどを考慮した上での「治療計画」を作成し、当該患者様およびそのパートナーの同意を得る事が必須となり、当該患者様に対する毎回の指導内容の要点を診療録に記載する事も必要となりました。医療側の事務仕事量もかなり複雑化し、レセプトへの記載内容も膨大となりました。多くの不妊治療施設が大変な仕事量に忙殺されておられる事と思います。

⚫️その他

・医療側でも注意をしないといけない状況があります。保険適用で年齢ごとに胚移植の回数が決められていますので、転院をされた方の場合には前医からの診療情報提供書が必要となります。ご本人の申告だけで、生殖補助医療の保険診療を行う事は出来かねる事となります。

厚生労働省より「過去の治療を行った他の保険医療機関への照会」が求められております為、「保険診療での生殖補助医療の初日の治療計画日」「保険診療での胚移植回数」の書面を確認してから、生殖補助医療の保険診療が開始となります。

ですので、転院の際には、前医からの診療情報提供書が必要となります。記入が足りない場合には、足りない部分を確認してからの治療開始となりますので、そこもご注意頂きたい内容となります。

気楽に受けられるようになった分、患者様側にとっても医療側にとっても、保険診療規則を厳格に守っていく治療となりました。少しでも早く少子化から抜け出して、元気な日本を取り戻して行きたいものです。

(T・S記)

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