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ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて

令和4年6月1日 発行

子宮頸がんという病気をご存じでしょうか

子宮頸がんは子宮の出口部分(頸部)にできるがんで、多くは若い女性に発生します。

日本では毎年約1万人が発症、約2900人の女性がこの病気で亡くなっており、1クラス35人の学級を考えた場合、2クラスに1人は子宮頸がんになり10クラスに1人は子宮頸がんで亡くなるという計算になります。

子宮頸がんは早期に発見し適切な治療を行えば治すことができます。そして、子宮頸がんはワクチン接種によって予防が可能な病気です。

しかし、進んだ状態で見つかると手術によって子宮の一部もしくは全体を摘出する必要があるため、妊娠にも影響を及ぼすことがあります。

子宮頸がんの原因が何かをご存じでしょうか

子宮頸がんのほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が原因とされています。HPVは、性経験のある女性の50%以上が生涯で一度は感染するとされる一般的なウイルスで、子宮頸がん、肛門がん、腟がんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わっています。

HPVに感染しても自然にウイルスが消失することがあります。しかし一部の人には感染が継続して子宮頸部の細胞が異形成といわれる前がん病変に変化していきます。その状態がさらに継続すると“前がん病変”から“がん”に進行してしまい手術などの治療が必要となります。

HPVのすべてが子宮頸がんの原因となるわけではありません。200種類以上あるHPVの中で少なくとも15種類のタイプが原因となることがわかっています。そしてこの原因ウイルスのワクチンを接種することで予防が可能なのです。

HPVワクチン積極的勧奨の再開とキャッチアップ接種

HPVワクチンは欧米で接種が始まりその有効性が実証され、日本では2013年に定期接種が始まりました。

しかし、接種開始後に出現した副作用が大きく取り上げられ、わずか2か月後に積極的勧奨が中止となり、その後8年間日本ではHPVワクチン接種が控えられる状態が続いてきました。その間全世界ではHPVワクチンの接種率が上昇し、その恩恵をうける人々も増えています。

その後日本でも2021年11月の専門家の会議でHPVワクチン接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められたことから、2022年4月より個別接種を勧める取組を再開することになりました(定期接種の対象年齢は小学校6年から高校1年相当)。これがHPVワクチン積極的勧奨の再開です。またHPVワクチン勧奨接種が控えられていた間に接種機会を逃した方が接種できるよう、公費での接種機会を提供することになりました。これがキャッチアップ接種です。キャッチアップ接種の対象は、1997年度~2006年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)で、過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない女性です。2022年4月~2025年3月の3年間、HPVワクチンを公費で接種できます。

勧奨接種の再開にあたり、HPVワクチンについての情報を整理し、副作用についてもより理解を深める必要があります。副作用のないワクチンは残念ながら存在しません。一方でワクチン接種によって我々が享受できる恩恵も忘れてはなりません。

HPVワクチン接種を迷われている方、副作用や接種の方法などで心配なことがある方は遠慮なくかかりつけ医にご相談ください。

また、子宮頸がんの予防のためには、子宮頸がん検診を定期的に受診することも大切です。検診を定期的に受けることで、がんの早期発見・早期治療につながります。

20歳を超えたら定期的な子宮頸がん検診を受診することを強くお勧めします。

(T・T記)

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