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小児のコロナワクチン接種について

小児のコロナワクチン接種について

令和4年4月1日 発行

子どもにコロナワクチンは必要でしょうか?

2019年末、中国武漢に重い肺炎などをおこし、死亡も稀ではない病気が出現しました。それは瞬く間に世界中に拡散しSARS-CoV-2による感染症、Covid-19と命名されました。最新の技術を駆使して、短期間のうちに開発されたワクチン、それがmRNAワクチンです。mRNAは情報伝達の働きを有し、役目を終了すると短時間のうちに分解処理されます。ヒトの細胞核内には入れないので、長期にわたる影響やヒトの遺伝などへの問題は生じないといわれています。これはウイルスの表面にある突起(Sタンパク)を合成するための情報をもった遺伝子(mRNA)であり、注射により筋肉内に入ると筋肉細胞内に取り込まれます。そこでSタンパクが作成され、これを感知した免疫細胞であるリンパ球が、感染防御に必要なS抗体を作成します。S抗体はウイルスがヒトの細胞に侵入するために必要なSタンパクに結合してウイルスの侵入を防止します。今までにはなかった新しいワクチンなので、特に子どもに接種するにあたって、「大丈夫?」「副作用は?」「成人してからの問題は?」と心配になります。米国では2020年12 月成人への接種が開始され、2021年5月には16歳以上、同年11月には5歳から11歳へと、適応年齢が拡大されました。2020年12月から2021年12月までにCOVID-19ワクチンが米国で4億7千万回接種され、副作用の報告が検討されました。また2021年11月3日〜12月19日までに5〜11歳の子どもにファイザーのmRNAワクチンが約870万回接種され、有害事象などの検討も行われました。ここで把握されたものは、約4200件であり、ほとんどが発熱、嘔吐など軽い症状でした。ワクチン後の心筋炎は気になるところですが、Covid-19に感染した場合の心筋炎は頻度も程度も数倍以上、また長期化する場合があります。一方でワクチンによる心筋炎はより軽症で、ほぼ全員が回復していると報告されていますが、胸痛や動悸などの訴えには迅速な受診が必要です。接種後数日にみられる局所の痛みや腫れ、インフルエンザのような悪寒、発熱、筋肉痛、倦怠感、頭痛など、成人よりも少ないですが、やはり子どもにも発現します。2022年3月、今まで接種をしていなかった5歳から11歳に、接種券が配布されます。

では子どもにワクチン接種をする利点は何か?

ワクチンの利点としては、罹り患防止、あるいは罹り患しても軽症化できることです。また生活制限緩和、周囲への感染予防も期待できます。

確かに子どもは不顕性感染も多く、また症状が出ても 軽症といわれていますが、日本でも重症になり、集中治療室への入院を必要とした子どももいますし、外国では死亡も報告されています。その中でもMIS- C(Multisystem InflammatorySyndrome in Children, 小児多系統炎症性症候群) と言われるものは、コロナ罹り患後、数週間で発症し全身に様々な症状を認める重い病態で、子どものコロナ感染症において稀ではありますが、最も危惧されています。コロナそのものは気づかないか、軽症のことが多いようです。

このような重症化については、ワクチン接種済か、未接種かで明らかな差があり、ワクチンには重症化予防の効果があることを多くの論文が示しています。

また、ロングコロナと言われ、数カ月続くことがある様々な症状も子どもにも起こることがありますので、できるだけコロナにかからないような工夫や努力が必要です。

子どもたちの健やかな成長を保証するためにも、一日でも早くこの疫病が消え去ることを願わない日はありません。

もう少し、もう少しと、期待しつつ、我慢してきたところですが、すでに2年半経過しました。本当にいい加減にしてと、ウイルスに文句を言いたいです。

(N・K記)

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