目黒区医師会ロゴ

冬場に多い頻尿について

冬場に多い頻尿について

令和3年12月1日 発行

冬になるとおしっこの回数が増える経験をされた方も多いのではないでしょうか?

起床から就寝までの間に8回以上おしっこに行くことを「頻尿」と呼びます。水分摂取量や体質などによって排尿回数は変化します。同じように水分を摂っていても寒くなると排尿回数が多くなる理由はいくつか考えられます。体が冷えると手足の末梢血管と呼ばれる血管が縮んで尿を作る臓器である腎臓へ通常より多い血液が運ばれるために尿量が増えること、夏場などの暖かい季節と比較して汗をかくことが少なくなるために体の水分が多くなって尿量が増えるため、寒さが交感神経を刺激するために尿意が強くなる、などが考えられます。

最近になって注目されているのは夜間頻尿です。歳だから仕方ない、と考えている方も少なくはないでしょう。就寝中に排尿に行くことを夜間頻尿と呼んでおり、近年、夜間頻尿の回数と寿命の関係についての研究報告がいくつか出ています。高齢者の夜間頻尿は健康寿命は反比例するとの研究結果だけではなく、海外の報告では夜間頻尿があると、死亡率が2倍になるとの研究結果もあります。

日中の頻尿や夜間頻尿が気になる場合は、まずは生活習慣の見直しが排尿回数を減らすご自分でできる簡単な解決方法です。少々手間のかかる方法であっても、何時何分にどれだけの量を排尿しているか数日間記録する「排尿日誌」の記録がおすすめです。平均して尿量が多ければ飲水量が多いことがほとんどですし、一回あたりの排尿量が少ないのに回数が多い場合は膀胱が尿を溜める力である蓄尿量になんらかの問題が生じている可能性があります。

近年「過活動膀胱」と呼ばれる病気が注目されており、有効な治療薬が処方されています。過活動膀胱は急激な尿意によって、トイレが近くなる、我慢できなくて尿が漏れる(失禁)などの症状を伴うものであり、日常の生活の質( QOL ) の低下を招きます。過活動膀胱の症状としては「尿意切迫感」「日中の頻尿」「夜間頻尿」「切迫性尿失禁」が挙げられます。

過活動膀胱の薬としては経口薬・貼付薬があります。また作用機序としては膀胱平滑筋の過度の緊張を緩めることによって膀胱が収縮しようとする動きを抑える抗コリン薬、膀胱の容量を増やす選択的β3アドレナリン受容体作動薬、の二種類があり過活動膀胱の治療薬として有効です。一方、抗コリン薬は口が乾く、喉が渇く、便秘がちになるなどの副作用もあり、選択的β 3アドレナリン受容体作動薬は心臓病のある方や不整脈の薬を服用している方には処方はできません。

2020年4月より生活習慣の見直しや治療薬でもなかなか症状が改善しない「難治性過活動膀胱」の治療法としてボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が保険診療できるようになりました。

日中の頻尿や夜間頻尿は、歳だからと考えないでかかりつけ医にご相談ください。

(K・O記)

knowledge_box-bottom
一覧へ戻る