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心不全の注意点

心不全の注意点

令和3年4月1日 発行

超高齢社会を迎えて、日常さまざまな場面で心不全という言葉を耳にしますが、今月は心不全について考えていきたいと思います。

わかりやすい表現にすると「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」といわれています。

この言葉のなかに①心臓のポンプとしての機能が低下する原因があり、②息切れやむくみなどのさまざまな症状が出現し、③進行性で予後が悪い病気であるということが含まれています。

心不全はほとんどの心疾患の終末像といわれています。

心臓が悪くなる原因として、①血圧が高くなる病気(高血圧)②心臓を養っている血管の病気(心筋梗塞)③心臓の筋肉自体の病気(心筋症)④心臓の中には血液の流れを正常に保つ弁がありますが、その弁が狭くなったり、きっちり閉まらなくなったりする病気(弁膜症)⑤脈が乱れる病気(不整脈)⑥生まれつきの心臓病(先天性心疾患)があげられます。

それぞれの病気に対してそれぞれ適した治療法がありますが、①高血圧と②心筋梗塞は生活習慣病を基盤にしているので、特定健診などの段階から介入すれば新規発症を抑制することも可能ですので、積極的に特定健診等を通じて医療機関受診等を心がけましょう。

また以前に指摘された生活習慣病が心不全の悪化につながる可能性もあります。予防的観点からも食事などでの減塩、肥満の改善が望ましいことといわれており、まずは医療機関にそのことも含めて相談されてはいかがでしょうか?

ただし現在新型コロナ感染症拡大に伴い、なかなか医療機関を受診できないことが多いと思われます。それではご自宅で心がける注意点を考えてみたいと思います。

①まず心不全を疑うきっかけに注意しましょう。
まずは患者さん自身がなにかおかしいと感じて医療機関に受診しない限り、心不全の診断はできません。心不全を疑う症状に注意しましょう。

② 「むくみ」「息切れ」に要注意。その変化に注意しましょう。
心不全の初期に見られる症状として足の前面や足首、足の甲を指で押さえるとくぼみができるような「むくみ」や坂道や階段での「息切れ」があると言われています。
また心不全は全身に水分がたまってしまう状態です。
体重増加(1週間で2キロ以上の増加)や横になると咳が出たり苦しくなったりします。
徐々に心不全が悪化していることを示しており、早めに医療機関を受診してください。

③「横になると苦しくて眠れない」は緊急事態です。
横になっても息苦しい、苦しくて横になれないという状態は心不全の急速な悪化です。血圧が低くまた冷や汗が出て息苦しいときは心臓が十分な血液を送り出せていない状態の悪化かショック状態を示唆します。
これらの症状は緊急受診を要する症状です。すぐに医療機関等に連絡をお願いします。

医療機関を受診する際に手帳などに1週間の体重の増減などとともに具体的な心不全の症状を書き加えておきます。

・息切れ、胸痛、胸部不快感、動悸がする。

・靴を履くときにかがみ込んだり、お辞儀の姿勢をすると苦しくなる。

・手足や顔がむくむ。

・夜間に咳が出たり、就寝中や横になると息苦しくなるが、起きていると楽になる。

・夜間、尿意で起きることが多い。

・手足が冷たく、慢性的な疲れを感じる。

・意識を失ったことがある。

など気になる自覚症状がありましたら、お近くの医療機関の医師にご相談するのをおすすめします。

日本は世界でもトップクラスの超高齢社会であり、平均寿命は世界第1位です。

心不全を含む心疾患にかかる患者は増加し、がんに続いて、死因の第2位を占めています。高齢者の増加に伴い、高齢心不全患者さんが大幅に増加すること=「心不全パンデミック」が予想されています。

心不全の予後は加齢とともに悪化すると考えられ、心不全の発症率は50才代で1%、80才代で約10%とされています。発症率の高さからも心不全パンデミック時代を迎えます。

日常生活において心不全を疑うきっかけに注意をはらい、心不全を予防し再発させないための治療を少しでも早く医療機関で受けられることのきっかけとなれば幸いです。

(H・Y記)

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