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スギ・ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法

スギ・ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法

令和3年2月1日 発行

アレルギーの元となる物質を体内に入れて、アレルギー疾患を根本的に治そうとする治療法がアレルゲン免疫療法です。皮下注射によるアレルゲン免疫療法は1960年代からありましたが、2014年にスギ花粉症に対する舌下免疫療法(Sublingual Immunotherapy、以下SLIT)が認可され、2015年にはダニのSLITが認可されました。

内服薬や点鼻薬による従来のアレルギー性鼻炎の治療は、一時的に症状を抑えるものであり、アレルギー体質そのものを治す治療法ではありません。一方アレルゲン免疫療法は現時点において、アレルギー性鼻炎を根本的に治す唯一の治療法とされています。SLITは注射による免疫療法よりも治療方法が簡便で、患者さんにとっても通院の大変さや注射の苦痛がない治療法のためここ数年で広く普及してきています。

治療効果ですがスギ、ダニアレルギー性鼻炎ともに20~30%の方が治癒し、全体としてみると80%以上の方に効果があります。

治療の準備として、まず事前にアレルギーの血液検査を行うことが必要となります。具体的な治療方法ですが、スギもしくはダニ成分の錠剤を舌の下に1分間ふくみ、その後に飲み込みます。飲み込んだ後は5分間はうがい・飲食を控えます。1回目の治療は副反応に十分な注意が必要となるため医療機関で行います。1回目の治療が問題なければ、その後は自宅で約4年間治療を継続します。治療をスタートする時期はスギSLITが6~11月、ダニSLITはいつでも開始できます。またスギとダニ、両方のSLITを併用して治療することも可能です。

もともとスギ、ダニにアレルギーのある患者さんの体にその成分を入れるわけですので、副反応が生じる可能性があります。副反応として口の中や唇の腫れ、かゆみ、のどや耳の違和感などがありますが、多くは軽症で治療を中止することはまれです。またアナフィラキシーとよばれる強いアレルギー反応の可能性もありますが、日本ではまだ報告はないようです。

適応年齢ですが、薬を舌下に1分間ふくみ、その後に飲み込むということをきちんと理解できれば何歳からでも治療が行えます(採血も必要となるので、おおむね5~6歳からが一般的です)。65歳以上の高齢者は効果が十分得られない可能性が高いことや、副反応がより重く出るおそれがあるため推奨されていません。また妊娠中の方、重い喘息、心臓病、免疫不全の方は治療できません。

治療は講習を受けた医師のいる医療機関でないと行えません。薬を発売している製薬会社のホームページ(torii-alg.jp)から治療可能な医療機関が検索できるので参考にされてください。

アレルギー性鼻炎の患者さんは年々増加傾向にあり、また低年齢からの発症が増えています。わが国では人口の約50%がアレルギー性鼻炎であると言われています。毎年春先は鼻炎で薬を飲むのがおっくう、小さい子どもの将来的なことを考えると心配、受験シーズンと花粉症の時期が重なるので少しでも良くしておきたいなど、スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎でお悩みの方は、一度医師にSLITについてご相談してみてはいかがでしょうか。

(M・W記)

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