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熱中症

熱中症

令和2年8月1日 発行

熱中症

熱中症とは、気温や湿度も高い条件において、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体内の体温調節機能がうまく働かないために起こるさまざまな症状の総称のことです。近年、気候の変動等の影響で熱中症による救急搬送人員数や死亡者数が増加しており、年によっては「災害級の暑さ」と呼ばれる気候になることがあります。熱中症は、正しい知識を身につけることでその発生や重症化を防ぐことができる病気の一つです。正しい知識を身につけて暑い時期を賢く乗り切りましょう。

熱中症を来しやすい環境

熱中症は気温だけでなく、湿度、風速、放射(幅射)熱(太陽からの日射、地表面での反射、建物からの輻射など)が関係しています。よって、気温が高い、湿度が高い、風が弱い、日射・輻射が強いという条件は、いずれも体からの熱放射を妨げる方向に作用するため、熱中症のリスクを高めます。また、例年梅雨明けの時期には、それまで雨や曇りで比較的涼しい天候から、一気に高温多湿な天候になり、多くの方がまだ体が暑さに慣れておらず上手に汗がかけないために熱中症リスクが高くなります。

なりやすい人の特徴

全体としては男性に多く、東京都での男女別で見ると、男性では幅広い年齢層で多くの患者が見られ、女性では若年層と高齢者に発症が多い傾向にあります。さらに高齢者では、男女ともに日常生活のなかで起こる熱中症が多く、屋内での発症も少なくありません。特徴として、屋外や労働で発症する熱中症に比べて、室内で発症する熱中症は生活の中で徐々に進行し、周囲の人に気付かれにくく対応が遅れる危険性があります。さらに、心臓疾患、糖尿病、精神神経疾患など基礎疾患を有していたり、服用している利尿剤等が脱水を招いたりもしますので、夏場の投薬内容は良くかかりつけ医と相談しましょう。

予防策

暑さが本格化してからではなく、梅雨に入る少し前から暑さに体を慣れさせておく必要があります。暑い時期になりましたらこまめに水分をとり、喉の渇きが強くなってから慌てて水分をとるのではなく、そうなる前から補給を心がけましょう。また、日陰でこまめに休憩する、濡らしたタオルを首に巻くなど、暑い時は他人に合わせず無理しない意識が大切です。日傘・帽子の利用や涼しい服装を心がけるなど身なりにも注意をしましょう。さらに、厳しい暑さを示す指標として用いられる「熱帯夜」では寝ている時に水分が失われがちです。寝る前や起床後の水分摂取も心がけましょう。熱中症では水分とともにナトリウムなどの電解質の喪失を認めるため、水分の補給に加えて適切な電解質の補給も重要です。

もしもの時の応急処置

熱中症を疑う症状(めまい・失神・筋肉痛・筋肉の硬直・手足のしびれ・気分不快・頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感・意識障害・けいれん・手足の運動障害・高体温)を認めた場合には「呼びかけに応じるかどうか」を確認し、困難であれば医療機関に搬送します。呼びかけに応じることができれば、涼しい場所へ避難し、衣類をゆるめ、体を冷やします(氷のう等で首、脇の下、大腿のつけ根を集中的に)。さらに水分を自力で摂取できるのであれば、水分・塩分を補給しますが、仮に自力で摂取できない場合は医療機関を受診しましょう。自力で水分・塩分を摂取し症状が改善してくるのであれば、安静にし、十分に休息をとり経過観察となりますが、いずれにしても症状が改善してこない時にはやはり医療機関への受診を考えましょう。

「新しい生活様式」における熱中症予防

「新しい生活様式」とは、新型コロナウイルスの感染防止の3つの基本である ①身体的距離の確保 ②マスクの着用 ③手洗いの実施や「3密(密集、密接、密閉)」を避ける等の対策を取り入れた生活様式のことです。②マスク着用は飛沫の拡散予防に有効ですが、着用していない場合と比べて熱中症のリスクが高まると言われています。マスク着用時の注意点として、気温・室温が高い日には、激しい運動を避け、喉の渇きを感じなくてもこまめに水分補給をしましょう。さらに、屋外で人との距離が2m以上など十分な距離が確保出来る場合には熱中症予防のためにマスクをはずすようにしましょう。

今年の夏は、ウイルス対策を忘れずに、暑さを避け、水分をとり、状況に応じて適宜マスクをはずすなど「熱中症予防」も考えながら生活をする必要があります。

(K・H記)

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