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帯状疱疹

帯状疱疹

令和2年6月4日 発行

身近な人がかかってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みがあらわれ、それにつづいて赤い斑点と小さな水ぶくれ(疱疹=ヘルペス)が帯のように出来るので「帯状疱疹」と病名がつけられました。

帯状疱疹の原因となるのは子供のころにかかった「水ぼうそう」です。水ぼうそうの原因となるウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス=VZVウイルス)は水ぼうそうが治った後も身体の神経節に潜伏しています。普段はおとなしく潜んでいますが、ストレス、疲労、加齢、外傷、免疫不全状態などで抵抗力が低下した時に再びあばれだして帯状疱疹として姿をあらわすのです。

帯状疱疹は50~70歳代の人に多く見られますが、水ぼうそうにかかったことがある人、水ぼうそうの予防接種をしたことのある人は誰でも何歳でも帯状疱疹になってしまう可能性があります。日本人では3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。

頭、顔、首、体、四肢手足のどこでもいいのですが、左右どちらか一方にチクチクと痛みが現れます。この時点では頭痛や腰痛、筋肉痛と思われることもあり、湿布などを貼られる方もいます。次いで数日後に発赤と水疱があらわれ「湿布でかぶれた」と来院される方もいます。湿布のかぶれならば湿布を貼ったかたち通りに赤くなりますが、帯状疱疹では神経走行に沿って水疱ができて痛みがつよくなってきます。痛みは個人差が大きく、「ちょっとかゆいんだよね」という方から「夜寝られない!」という方まで様々です。

水ぶくれは1~3週間かけて乾いてかさぶたになってきます。普通4~8週間でかさぶたも消え痛みも楽になってきますが、深く潰瘍化して痛みが続き「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる状態になってしまう方もいます。①皮膚症状が重症 ②夜も眠れないほど強い痛み ③60歳以上の方 ④糖尿病などの基礎疾患のある方は注意が必要です。

顔面の帯状疱疹の場合、角膜炎・結膜炎を起こしたり、耳鳴り・難聴・顔面神経麻痺などを生じることもあります。腰回りの帯状疱疹では排尿障害・便秘を起こすこともあります。重症ではヘルペス脳炎、髄膜炎を起こすこともあります。

典型的な水ぼうそう、帯状疱疹ならば診断も容易ですが、初期で典型的でない場合でも水疱さえあれば簡便な操作で数分で診断できる検査が可能です。

基礎疾患があり重症の場合には安静加療のため入院点滴治療を行う場合もありますが、一般的には抗ヘルペスウイルス薬の内服を7日間行います。抗ヘルペスウイルス薬はウイルスが増えるのを抑制することができます。内服開始後2日程して効果が現れるので、それまでに内服を止めたり増やしたりしてはいけません。このお薬は早い段階で始めるほどより効果が期待できます。他に鎮痛剤、抗うつ剤、ビタミン剤、漢方薬を併用することもあります。

帯状疱疹は疲れている時やひどいストレスなどにより免疫力が低下したときに現れます。おいしいものを食べてゆっくり休めるといいでしょう。また身体が冷えると痛みが増しますので体を温めるようにして下さい。水ぶくれはやぶらないようにして下さい。水ぼうそうになったことがない人、もしくは水ぼうそうの予防接種をしていないお子さんには「水ぼうそう」としてうつしてしまうことが考えられますので接触は控えましょう。帯状疱疹は空気感染はしませんが、顔面の帯状疱疹では口腔粘膜に生じることがあるため空気感染することがありますので注意して下さい。

帯状疱疹の発症率は50歳代から急激に高くなります。現在50歳以上の方は帯状疱疹を予防するワクチンを打つことができるようになりました。皮下に1回接種します。自費での接種になりますが、帯状疱疹になる確率を半分に、なった時の痛みを半分に、その後の神経痛の症状を半分に減らすことができます。かかりつけ医にご相談なさるといいでしょう。

(K・O記)

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