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こどもの中耳炎とプール

こどもの中耳炎とプール

平成24年8月1日 発行

「耳に水が入ると中耳炎になる」ときいたことはありませんか?昔は中耳炎のときのプールはすべて禁止ということがほとんどでした。しかし最近は少し意見もかわってきています。プールと中耳炎のお話をする前に、まず中耳炎についてお話します。

中耳炎とは鼓膜の内側にある中耳腔という小さな空間に炎症がおきることです。炎症により中耳腔粘膜が腫れたり、滲出液がたまって鼓膜が赤く腫れてきたりします。そのため中耳炎の初期には強い耳の痛みを訴え、鼓膜が破れ、たまっていた「うみ」が耳漏として耳の外にでてくることがあります。 その原因はほとんどが細菌の感染によるものです。では、その細菌はどこから中耳腔に侵入するのでしょうか。それは耳の穴からではなく鼻や咽から入ってくるのです。風邪など上気道炎につづき、鼻の中や咽に細菌感染をおこし、鼻の一番奥にある鼻と耳をつなぐ耳管という細い管をとおり、細菌が鼻から中耳腔へと侵入し中耳炎をひきおこされます。子どもは耳管が短く水平に近いため細菌が容易に侵入しやすく、免疫力もまだ充分ではないため、大人よりも中耳炎にかかりやすくなっています。治療は細菌感染によるものですから、初期の段階では抗菌薬を数日服用します。重症の場合は鼓膜を切開してたまっている滲出液を抜いたりします。それと同時に鼻が悪くなることが原因ですから、鼻の治療をしっかりと行うことも大切です。

以上お話したように、中耳炎の原因は耳に外から細菌が入るのではなく、鼻や咽が悪くなることからおきるものです。ですから鼓膜に孔があいていない限り基本的にプールで耳に水がはいって中耳炎になることはまずありません。小さなお子さんで水遊び程度であればほとんど問題ありません。同様にお風呂に入ることも可能です。その際はあまり熱いお風呂に長時間はいることは体力を消耗したり、頭部が温まることで耳の中の充血がひどくなり痛みが増すことがあるので、短時間で体を清潔にする程度にサッと入ることが必要です。

しかし、すべて問題ないわけではありません。プールに入れる条件もあります。 プールに深く潜ったり、スイミングで飛び込みを行うことは中耳炎を悪化させる原因となりうるので行ってはいけません。中耳炎の初期である急性期で痛みがあるときや発熱があるときは、もちろん控えてください。また、耳漏があるときも禁止です。そして、中耳炎の原因である鼻が悪いときも考慮しなくてはなりません。プールの水に含まれている消毒液の塩素により、鼻の粘膜が障害をうけます。またプールで体が冷えて黄色い鼻水が増えることもあるので、プールのあとにも注意が必要です。鼻が治らないと中耳炎も治まらないので、耳だけでなく鼻の状態にも気をつける必要があります。

プールは子どもたちにとって家族や友人達と遊べる楽しみのひとつです。ずっと禁止されていては子どもにとってストレスにもなります。一概にすべて禁止するのではなく、体調や中耳炎の状態、鼻の状態をよくみて、かかりつけ医と相談して、可能かどうか検討してみるとよいと思います。

(U・I)

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