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防げたはずの難聴 ~だからこそ、おたふく風邪ワクチンが必要なのです〜

防げたはずの難聴
~だからこそ、おたふく風邪ワクチンが必要なのです〜

平成29年12月1日 発行

日本耳鼻咽喉科学会から、「2015年1月から2016年12月の2年間で、流行性耳下腺炎(おたふく風邪=ムンプス)によって難聴となった人が少なくとも300人以上いて、うち16人は両耳の難聴になった」と報告されました。難聴の発症年齢は、就園や就学年齢、そして子育て世代に多く、妊娠中におたふく風邪にかかってしまったため余儀なくおたふく風邪の治療を断念しなければならなかった人もいました。(日本耳鼻咽喉科学会ムンプス難聴全国調査結果より抜粋)

ではなぜ医療の発展した日本で、今なおこんなにも多くの人がおたふく風邪で難聴になってしまうのでしょうか。

それは、日本でのおたふく風邪ワクチンの接種率の低さ(接種率30-40%)に原因があります。

現在、日本は先進国で唯一おたふく風邪ワクチンが定期接種化されていない国です。

おたふく風邪ワクチンを打っていない人が多くいることが、日本の園や学校でおたふく風邪が流行してしまう原因なのです。

ワクチンを打つ人が少ない原因として、おたふく風邪で難聴となってしまう頻度の高さや、おたふく風邪による難聴が予防接種により予防できる後遺症であることが知られていないことが考えられています。

おたふく風邪ワクチン接種により防げる難聴があることを知ってほしいのです。

おたふく風邪(ムンプス)難聴

おたふく風邪難聴の発症は、学童期の低学年に最も多いと報告されています。

沢山の情報を収集し、色々な人と交流し、様々な経験を重ねて、人生の基礎作りをしていく子どもにとって、耳からの情報が入って来ない難聴というハンディキャップは大変厳しいものです。

おたふく風邪にかかると、耳下腺や顎下腺などが腫れて痛みが出現し熱がでて、1週間くらい辛い思いをして治癒することが多いですが、おたふく風邪が原因で髄膜炎(1-10%)、膵炎(4%),睾丸炎(20-40%)、難聴(0.01-0.5%)などの重い合併症を起こすことがあります。おたふく風邪には上に挙げたように難聴以外にも重い合併症があるのです。

世界おたふく風邪ワクチン接種状況

世界保健機関(WHO)によると2016年121ヵ国が、おたふく風邪により起こる重い合併症をなくすため、1歳時におたふくかぜワクチン1回目を、国によっては4歳から6歳時に2回目を接種しています。これらの国では、おたふくかぜによる難聴は過去のものになっています。

自然感染とワクチンの比較

ワクチンによる副反応を心配してワクチンを打たない選択をする人がいますが、ワクチン接種により起こる副反応発生率は、自然にかかることによって起こる合併症発生率と比べ下の表に示すように明らかに低いのです。

おたふく 自然感染による合併症発生率と予防接種による副反応発生率

学校保健安全法によりおたふくかぜの場合、耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後、5日間経過し、かつ、全身状態が良好になるまで登校停止と決められています。文部科学省は感染症対策として最も大事なのは予防であり、そのために予防接種を推奨しています。

集団生活に入る前までに、その年齢で接種可能な予防接種を受けることは、大切な子ども達が、予防可能な病気から守られ、登校停止によって教育を受け損なうことなくまた理由があり予防接種を受けられない仲間を守ることになるのです。

(K・N記)

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過去の病気と患者さんも医師側も思っていた梅毒が大流行!!

過去の病気と患者さんも医師側も思っていた
梅毒が大流行!!

平成29年10月2日 発行

性病の一つとして有名ではあるが、実際にお目にかかることがなかった梅毒に感染している人が近年急増しています。

梅毒患者さんが開業医でも、発見され出したのはここ10数年ですが、ここ2-3年は爆発的に増加している体感があります。感染症なんだからある一定数の患者さんがいれば、パンデミックでは無いですが大流行するのは当然。なぜ、近年になって梅毒感染者が増加しているのか、いくつかをエビデンスはありませんが、考えてみました。

1:医師が梅毒のことを詳しく知らない。

2:若い世代において、性に関する認識が大きく変わっている。

3:外国人観光客の増加に伴い、海外から梅毒が流入している。

4:性風俗の形態が変化した。

5:梅毒なんて過去の病気だと多くの人が考えてしまっている。

1:医師が梅毒のことを詳しく知らない。

梅毒感染の初期症状として硬結、硬性下疳が有名ですが、これ自体を若い医師は写真でしか、見たことがないと思われます。硬結とは感染初期に小さな小豆大のブツブツができることで、見慣れていない医師だと、毛穴の感染症かな?と診断してしまうような病態です。この時に両鼠径部のリンパ節を触診すれば、ひょっとしたら梅毒かもと考えるハズですが見逃してしまうことも多いようです。

2:若い世代において、性に関する認識が大きく変わっている。

性病の一つである「淋菌」を聞いたこともない病気とおっしゃった患者さんも複数人経験していますし、梅毒という性感染症自体をご存知ない方もかなりの数いらっしゃります。性行為と言っても、自分は当たり前の行いであったと考えていても、第三者から見た場合は一般的ではない動きをしている場合もあり(このあたりはご想像にお任せします)ますし、オーラルは性行為では無い、との認識を持った若者も多いのです。

3:外国人観光客の増加に伴い、海外から梅毒が流入している。

梅毒ってもともとアメリカ大陸の風土病であったものを、コロンブスらがヨーロッパに持ち込んで世界中に拡散した、と一般的に言われています(真偽は不明)。まあ、それ以前にアメリカ大陸に到達していた人も多数いるために正確とは言えませんが、少なくとも江戸時代には梅毒が日本でも感染症として存在しています。海外との交流を長崎の出島に限定したにも関わらず、全国で梅毒感染者が出ています(検査をしたわけじゃなく、病態から考えての診断)。感染症って交通手段が格段に劣っていた江戸時代、それも自由に往き来ができなかった時代でさえ、猛烈なスピードで拡散していたのです。日本であまり流行していなかった梅毒感染が近年増加しているのが、日本に訪れる外国人数の増加と同様に右肩上がりなのは、単なる相関関係であり、因果関係では無いかもしれませんけど…。

4:性風俗の形態が変化した。

梅毒感染が急拡大している原因として

近年はセックスワーカーをあっせんする業者(デリヘル)が増加しています。店舗型の業者に比べて感染症の検査を徹底できていない可能性もあります。店舗型の風俗店であるソープランド等は定期的に性感染症のチェックを行なっているのに、デリバリー風俗はその検査が定期的に行われていないのでは?ということです。また素人の人も昔は、若い女性は同世代と性交渉をしていたが、最近はインターネットなどを介して年齢の離れた男性と関係を持つ人もいる。年上男性が実は梅毒に感染していて、女性にうつしてしまうケースがあり、昔はありえなかった手段で異性と出会い性交渉をすることが梅毒感染者増大の原因としてあげられています。

5:梅毒なんて過去の病気だと多くの人が考えてしまっている。

梅毒の第一期と呼ばれる感染後3週くらいで出現する、硬結・硬性下疳も無治療で症状が回復することがあります。また、梅毒に感染しても症状が出ない場合もあります。となると梅毒の第二期の症状であるバラ疹などが出現するまでに、性交渉をしてしまうと第三者に梅毒を移すことになるんです。また、梅毒は1度罹ったから2回目は感染しないような免疫がつく感染症ではありませんので、何回でも感染を繰り返します。

心当たりがあれば医療機関を受診をすることをお勧めいたします。

(O・K記)

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胃がんリスク検査について

胃がんリスク検査について

平成29年8月1日 発行

ピロリ菌という名前を聞いたことがありますか?胃に長年にわたってすみつく細菌で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因はこれです。

このピロリ菌が、胃がんの原因でもあることがわかってきました。ピロリ菌がいる人の方が胃がんになるリスクが高いのです。ピロリ菌に感染しているかどうかを調べれば、胃がんになりやすい体質かどうかがわかります。

しかしピロリ菌に感染している人が全員胃がんになるわけではありません。そこで他の検査で補い、より正確にリスクを予測します。

ピロリ菌に長年感染すると、胃の粘膜はだんだん薄くなります。この状態を萎縮性胃炎といいます。いわば胃がんの「前がん状態」です。萎縮性胃炎かどうかは血液検査でペプシノゲンという物質を調べるとわかります。胃粘膜が萎縮するとペプシノゲンが少なくなるのです。そして胃粘膜が萎縮するほど(すなわちペプシノゲン値が低下するほど)胃がん発生の可能性は高くなるのです。

胃がんリスク検査とは、ピロリ菌感染の有無(血清ピロリ抗体値)と胃粘膜萎縮の程度(血清ペプシノゲン値)を測定し、被験者が胃がんになりやすいかどうかをA〜Eの5群(正確にはA群陰性高値を含めて6群)に分類する検査法です。

ピロリ菌は幼少期にしか人に感染できません。幼少期に感染しなかった人は、大人になってから感染することはないので一生涯ずっとA群のままです。感染した人はB群となります。このままずっとB群の方もいますが、人によってはその後数十年(人によって異なります)が経過すると、胃粘膜の萎縮が進みC群となります。さらに胃粘膜の萎縮が極端に進んだ場合には、ピロリ菌自体が生きていけなくなってしまい、胃粘膜からいなくなってしまいます。この状態がD群です。D群が最も胃がん発生の可能性が高く、C群、B群の順に胃がん発生の可能性が高いことが知られています。なおA群は最も胃がん発生の可能性が低いのですが、ゼロではないので、A群だからといって「絶対に胃がんにはならない」とは思わないでください。

胃がんリスク検査はがんそのものを見つける検査ではありません。胃がんになりやすい体質かどうかを調べる検査です。目黒区では平成20年に、東京都では初めて、胃がんリスク検査を区民検診に取り入れております(昨年までは胃がんハイリスク検診という名称でした)。その後現在では都内25区市町村(すなわち約半数の区市町村)で導入されるようになりました。

5年に1回、節目年齢のときに受けることができます。胃がんになりやすいと判定された場合には、胃がんの存在を確かめる精密検査(胃内視鏡検査等)の受診をお勧めいたします。

医学は進歩しています。最新の医学をもとにした新しい検査をどうぞご利用ください。

総合判定区分

(H・N記)

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脳をいつまでも若く元気に!

脳をいつまでも若く元気に!

平成29年6月1日 発行

現在世界諸国で高齢化、長寿化が進行するとともに、認知症の問題は単に医療の問題だけでなく、その国の政策決定の基本問題になりつつあります。我が国でも20年後には認知症患者さんが700万人にも達すると推測されています。認知症とは後天的な脳の障害が起きて、日常生活や社会生活に支障をきたすようになっている状態で、一方、初期の段階では意識はしっかりしている病気です。

認知症にはいくつかのタイプがありますが、約8割がアルツハイマー型認知症と考えられています。最近では原因は徐々に解明されていますが、脳の神経細胞が死滅し、脳に萎縮がおこり認知力や理解力が時間とともに低下し、失われた能力はもとに戻りにくいとされています。また患者さん自身は脳の機能低下が起こっていることに気づくことは殆どありません。アルツハイマー型認知症で最初に現れる症状はもの忘れです。しかし加齢による健康的なもの忘れと異なり、体験したこと自体を忘れている、ヒントを出しても思い出せない、もの忘れの自覚がないことが特徴です。食事をしたことを忘れている、会話がかみ合わない、料理の手順がわからないなど家族の方が、おや?と思うことがあったら、専門医の受診をおすすめします。またもの忘れの症状以外にも、不眠、うつ状態、攻撃的言動、ものとられ妄想、徘徊といった周辺症状で気がつかれることもしばしばあります。

アルツハイマー型認知症はゆっくりですが進行していく病気です。もし診断を受けたなら、早期からの薬物療法で進行を緩やかにして、適切なケア・介護で症状を良い状態に維持していくことも可能です。環境を整えたり、介護を受けることで表情がよくなったり、意欲が出てきたり、感情が落ち着いてくるようになります。

アルツハイマー型認知症の発症の危険因子は大きく3つにわけ考えられています。遺伝因子や加齢といった制御不可能なもの、高血圧・糖尿病などの医学的なもの、そしてライフスタイルが関連要因と考えられています。では認知症予防に有望と考えられるものにはどのような因子があるのでしょうか?ビタミンやω(オメガ)3不飽和脂肪酸や銀杏葉エキスなどの栄養面だけではあまり効果は期待できません。もちろん生活習慣病の薬物療法は非常に大事です。望ましい体重の維持、社会交流と知的な活動、禁煙も認知症予防に有望です。脳トレなどのゲームも一時脚光を浴びましたが、脳の同じ部位ばかり使っていてはあまり効果は期待できないのです。

では認知症の予防として脳を元気に刺激するにはどのような取り組みが効果的なのでしょうか?可能であればできるだけ仕事は続けていくことが望ましいでしょう。手先を動かして脳を活性化すること、例えば絵を描く、料理をするなどは段取りが必要ですから、非常に効果があります。特に男性には、料理は新しいことへの取り組みとしてお勧めしています。そしてもっとも効果があるのは、運動して脳の血流を良くすることです。運動といっても30分程度の散歩を1日2回継続することです。歩きながら五感も働かせましょう。腰痛などで運動は無理、という方には自分の好きな集中できるものを続けることも効果があります。カラオケやマージャンも良いでしょう。歌を歌ったり人とおしゃべりをすることで、顔や顎の筋肉を使うことで嚥下(飲み込み)の機能も保たれます。また、男性でも女性でも身だしなみに気をつけることもとても大事なことです。年齢を巻き戻すことはできませんが、ちょっと胸をはって、視線を上げてみたら、年を重ねるという初めての経験を楽しめるのではないでしょうか?

(N・F記)

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胃がん内視鏡検診が始まります

胃がん内視鏡検診が始まります

平成29年4月1日 発行

平成29年5月から目黒区のがん検診の一つとして、胃内視鏡(胃カメラ)による胃がん検診が始まります。目黒区在住で50歳以上であれば受診できます。今まで目黒区ではバリウムを飲むX線検査で胃がん検診を行ってきましたが、今年からバリウムによる検診か内視鏡検診か自分で選ぶことができるようになりました。

30年ほど前はがんと言えば「胃がん」で、胃がんに罹るとなかなか助からないと思われてきました。しかし、時とともに胃がんによる死亡は減りつつあります。胃がんに罹る人が減ってきていることと同時に治療によって胃がんが治るようになってきたからです。さらに、外科の治療も従来行われてきた胃の一部あるいは全部を切除する方法から、最近では初期の胃がんであれば粘膜の一部を内視鏡を使って切り取るだけで済むようにもなってきました。胃を切除することがないため、患者さんのからだへの負担も軽くなっているのです。しかし、このような方法が可能となるためには、胃がんの早期発見が必須です。

消化器専門の医師の間ではバリウムによる検査より内視鏡検査の方がより小さな病変、つまりより初期の胃がんを見つけることが可能であるというのはいわば常識でしたが、厚労省は明らかなデータが無いという理由で、長い間内視鏡検診を推奨してきませんでした。ところが近年、内視鏡検診によって胃がん死亡を減らせるというはっきりした証拠が出てきたため、国も重い腰を上げました。

その結果、多くの自治体が今後数年の間に胃内視鏡による胃がん検診を始める準備をしています。目黒区では先進的にこの検診を始めます。

バリウムによる検査は短時間に大勢の人を検査するには適した検査法ですが、モノクロームで胃粘膜面の凹凸を見ているので、胃内視鏡の精度には残念ながら及びません。また、放射線の被ばくという問題もあります。対して、胃内視鏡検査はカラー画像で見たいところをクローズアップしてみることが可能で、必要ならば粘膜の組織検査もその場でできます。但し、習熟した検査医でないと苦痛を伴う場合があります。また、この10年間で普及した鼻から入れる内視鏡を使えば楽に検査を受けることができます。直径5ミリのファイバースコープですが、デジタル技術の進歩のお陰で口から入れる10ミリ程の器械と遜色ない画像が撮影できます。

これからは、未だ症状も無い初期のうちに胃がんを見つけて内視鏡で粘膜の一部を切除するという、この方法であれば、入院期間も数日で済み、手術後に食事の量が減ったり、ゆっくり食べないと消化できずに苦しんだり、といった後遺症からほぼ解放されます。今や、胃がんで死ぬことは勿論、胃を切除することもなくて済むのです。そのためにもぜひ内視鏡検診を受けて下さい。

受診できるのは

50歳以上の目黒区民で、職場などで同様の検診が受けられない方のうち、前年度に目黒区胃がん検診を受けていない方です。つまり2年に1回検査が受けられます。胃内視鏡検診かバリウムによる検診かは自分で選ぶことができます。

平成29年4月から目黒区に申込制で、29年度だけは28年度にバリウム検診を受けた方も受診できます。

詳しくは目黒区役所にお尋ねください。

(H・W記)

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非結核性(非定型)抗酸菌症とはどんな病気か

非結核性(非定型)抗酸菌症とはどんな病気か

平成29年2月1日 発行

結核の原因である結核菌の仲間を、抗酸菌といいます。結核菌以外の抗酸菌で引き起こされる病気が非結核性抗酸菌症です。かつては結核菌によるものを定型的と考えていたので、非定型抗酸菌症ともいわれていました。

結核との大きな違いは、ヒトからヒトへ感染(伝染)しないこと、病気の進行が緩やかであること、抗結核薬があまり有効でないことなどがあります。近年、結核の減少とは逆に発病者が増えてきており、確実に有効な薬がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。また、HIV感染者への感染(エイズ合併症)が問題になっています。

原因は何か

非結核性抗酸菌が原因です。非結核性抗酸菌にはたくさんの種類があり、ヒトに病原性があるとされているものだけでも10種類以上があります。日本で最も多いのはMAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約80%を占め、次いでマイコバクテリウム・カンサシが約10%を、その他が約10%を占めています。

全身どこにでも病変をつくる可能性はありますが、結核同様、ほとんどは肺の病気です。発病様式には2通りあり、ひとつは体の弱った人あるいは肺に古い病変のある人に発病する場合、もうひとつは健康と思われていた人に発病する場合です。

症状

自覚症状がまったくなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然見つかる場合があります。症状として最も多いのは咳で、次いで、痰、血痰・喀血、全身倦怠感などです。進行した場合は、発熱、呼吸困難、食欲不振、やせなどが現れます。

一般的に、症状の進行は緩やかです。ゆっくりと、しかし確実に進行します。

検査と診断

診断の糸口は、胸部X線やCTなどの画像診断です。とくに、最も頻度の高い肺MAC症は特徴的な画像所見を呈します。喀痰などの検体から非結核性抗酸菌を見つけることにより診断されます。

ただし、本菌は自然界に存在しており、たまたま喀痰から排出される(偶発排菌)こともあるので、ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床所見と一致することが必要です。2008年に肺MAC症の診断基準が緩やかになり、(1)特徴的画像所見、(2)他の呼吸器疾患の否定、(3)2回以上の菌陽性で診断できることになりました。

菌の同定は、遺伝子診断法(PCR法やDDH法など)により簡単、迅速に行われるようになっています。 最も鑑別すべき疾患は結核です。そのほか、肺の真菌症、肺炎、肺がんなども重要です。

治療

結核に準じた治療を行います。最も一般的なのはクラリスロマイシン(CAM)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ストレプトマイシン(SM)の4剤を同時に使用する方法です。しかし、この方法による症状、X線像、排菌の改善率はよくても50%以下にすぎません。治療後、再び排菌する例などもあり、全体的な有効例は約30%です。副作用の出現率も3分の1程度あります。投薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があります。ただし、空洞のある例、排菌量の多い例、若年発症例、広範な病変例など、その人の人生に影響を与えると予測される場合には、積極的に治療をすすめます。

確実に有効な治療法がないので、患者数は増え、漸次進行例が増えてきているのが現状です。2008年に、クラリスロマイシンの大量療法とリファンピシンの代替薬リファブチンの保険での使用が可能となりました。

非結核性(非定型)抗酸菌症に気づいたらどうする?

結核に理解のある呼吸器科医あるいは結核療養所を受診するのがよいでしょう。生活は普通どおりにできますし、ヒトからヒトへ感染しないので、自宅で家族といっしょに生活してもかまいません。非結核性抗酸菌は水や土壌など自然界に存在しており、それが感染するということは、体が弱っている(免疫が落ちている)ことが考えられますので、むしろ体力を増強させるような生活が望まれます。

(R・S記)

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B型肝炎ウイルス予防接種

B型肝炎ウイルス予防接種

平成28年12月1日 発行

B型肝炎ワクチンが本年10月より定期接種となりました。接種対象者は2016年4月1日以降に生まれた乳児です!(それ以前に生まれた乳幼児は対象外ですので、任意接種となるため、残念ながら有料です)

B型肝炎ウイルス感染を防ぎ、将来の肝臓がんを予防できるワクチンです。B型肝炎ウイルスに感染すると、潜伏期(45~160日、平均90日)を経て急性肝炎を発症し、発熱・全身倦怠感・吐き気・嘔吐・黄疸などの症状がでます。時に重症化すると劇症肝炎となり、死亡することもありますが、一方で全く症状無く感染に気づかない場合もあります。成人の場合は持続感染することは少なく(数%)、多くは治癒しウイルスは消失し、その後は問題無し、と以前は考えられていましたが、最近はそうではないことが分かってきました。それはウイルスの遺伝子が肝細胞に残存し、免疫が弱くなる状況でウイルスの再活性化(ウイルスの増殖)が生じ、その後体力が回復するとウイルスとの壮絶な戦い(de novo肝炎)になり死亡するという、何ともやりきれない事態になることです。またB型肝炎ウイルスのタイプにも変化がみられ、最近は成人の感染でもキャリア化しやすい遺伝子型Aという型が増加し問題になっています。

このような事態にいつ誰がなるか、分かりません。それを防ぐため、ワクチンでB型肝炎への感染を予防しておくことが重要です。

乳幼児期に感染すると急性肝炎の症状が現れず、そのままウイルスが肝臓に棲み着き、特に新生児は95%、1歳では50%程度、慢性感染(キャリア)になり、やがて慢性肝炎、肝硬変、肝がんになる可能性があります。乳児のB型肝炎ワクチンは、B型肝炎ウイルス感染を防止し、将来の慢性肝炎、肝硬変、肝がんを防ぐという長期的肝がん予防ワクチンです。

今年6月WHOは、世界では2億4000万人がこのウイルスに慢性感染しており、肝硬変や肝がんなどのB型肝炎合併症のために1年で68万6千人以上の人が死亡していると言っています。

東アジアやサハラ下アフリカに最も多く、国によっては成人の5~10%が慢性感染者です。

日本ではB型急性肝炎により入院した人は推定で年 1800人位、軽症や潜伏感染も含めると5000人以上が新たにB型肝炎ウイルスに感染をしていると推定されます。

ではB型肝炎ウイルスにはどのように感染するのでしょうか?

これには垂直感染(出産時に母から子に)と水平感染(血液、唾液、汗、涙、精液などの体液を介して)があります。以前は輸血により感染することが多かったので、輸血後肝炎または血清肝炎と言われていました。1964年に有名なアメリカ大使ライシャワー氏が日本で1000ccの輸血を受け、血清肝炎に罹患したため、売血による輸血が廃止され、献血による輸血システムが採用されました。売血輸血時代は50%の人が輸血後肝炎にかかっていましたが、献血制度導入後の1960年代後半では16%、最近は0.001%に減少しています。

日本では世界に先駆けて、1986年1月1日以降に生まれた新生児、乳児にB型肝炎母子感染防止事業により、予防接種を含む的確な対応をした結果、垂直感染も激減しました。

輸血や垂直感染リスクが減少した現在では、粘膜や皮膚の傷から、精液、唾液、汗、涙などの体液による水平感染の防止が重要になっています。

水平感染を予防するため、WHOが1992年にユニバーサルワクチンとしてB型肝炎ワクチンを生後24時間以内の新生児に接種することを推奨し、現在115か国がこの方法で接種、また184か国が小児の予防接種スケジュールに含めています。日本では、水平感染防止のための予防接種は任意(国は特に推奨せず、希望者のみ有料で受けられます)のままでしたが、出遅れていた日本も2016年10月1日からB型肝炎予防接種を定期に加えました。

2016年4月1日以降にうまれたすべての乳児が対象となっており、B型肝炎ウイルスによる肝炎・肝硬変・肝細胞がんの発症が減ることが期待されます。

(K・N記)

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