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舌下免疫療法のその後

舌下免疫療法のその後

平成30年6月1日 発行

いよいよ6月に入り花粉症の治療薬、舌下免疫療法の開始時期到来です。今年の花粉の量は、思ったよりも多く、2月~4月にかけてかなり苦しまれた方は多いと思います。それは、今年がここ10年間の中では最も多くスギ・ヒノキ花粉が飛散した年だからです。6月に入ると花粉症の時期のことは忘れてしまいがちですが、今こそ花粉症を根本から治す舌下免疫療法の開始時期です。舌下免疫療法とは、2014年から始まった長期寛解・治癒を期待できる新しい治療で、舌下にスギ花粉に対するスギ花粉舌下液(商品名:シダトレン)を投与する、免疫治療です。その他に、2015年から始まったダニアレルギー性鼻炎に対するダニ舌下錠(商品名:アシテア、ミティキュア)もあります。スギ花粉とダニアレルギーのみが現在対象疾患となっています。治療期間が長く、花粉が飛散していない時期も治療を継続しなければならない根気のいる治療です。まだ、成人及び12歳以上の小児にしか適応がありませんが、いずれ幼児や児童にも適応が広がりそうです。

気になるところは、効果だと思いますが、以前から行われていたアレルギー物質を少しずつ注射していき、体に免疫抗体をつくっていく皮下免疫療法とほぼ同等の効果が認められています。全症例の2割に全く効かない人がいるものの、残り8割の人には何らかの効果が見られると言われております。今回、治療開始し3年目の治療成績が報告されておりますが、全体の3割の方が3年で寛解し、1割の方で治癒していると言われています。寛解率でいうと、1年目で17%、2年目で26%、3年目で33%の寛解例の報告があります。

また、薬物療法よりも効果が高かったとの報告もあります。

花粉症の時期に抗ヒスタミン剤というアレルギー症状をおさえる飲み薬や鼻にさす点鼻薬など薬物療法で改善されなかった方、コントロールのつかなかった方には、舌下免疫療法がお勧めではないでしょうか。それ以外にも、重症度にかかわらず、スギ花粉症に悩んでいる方、対処療法薬の使用量を減らしたい方のほか、将来受験や妊娠を控えた若年の方にもお勧めします。

もう一つ気になる副作用があります。スギ花粉症の方へスギ花粉舌下液を投与することで、口腔内が腫れたり、掻痒感がでたりする方がおります。また、極めて稀ですがショックをおこす方もいらっしゃるので、スギ花粉が飛んでいない今の時期に始めるのでベストです。2週間かけて、徐々にスギ花粉舌下液の量を増やしていきます。2週間~4週間に1度は通院が必要で、最低3年間は通院が必要になります。初回投与は病院の中で実施し、30分くらい経過をみて、副作用発現の有無の確認が必要になります。舌下免疫療法を希望する方は、時間に余裕をもって受診するようにしてください。

(T・K記)

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