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防げたはずの難聴 ~だからこそ、おたふく風邪ワクチンが必要なのです〜

防げたはずの難聴
~だからこそ、おたふく風邪ワクチンが必要なのです〜

平成29年12月1日 発行

日本耳鼻咽喉科学会から、「2015年1月から2016年12月の2年間で、流行性耳下腺炎(おたふく風邪=ムンプス)によって難聴となった人が少なくとも300人以上いて、うち16人は両耳の難聴になった」と報告されました。難聴の発症年齢は、就園や就学年齢、そして子育て世代に多く、妊娠中におたふく風邪にかかってしまったため余儀なくおたふく風邪の治療を断念しなければならなかった人もいました。(日本耳鼻咽喉科学会ムンプス難聴全国調査結果より抜粋)

ではなぜ医療の発展した日本で、今なおこんなにも多くの人がおたふく風邪で難聴になってしまうのでしょうか。。

それは、日本でのおたふく風邪ワクチンの接種率の低さ(接種率30-40%)に原因があります。

現在、日本は先進国で唯一おたふく風邪ワクチンが定期接種化されていない国です。おたふく風邪ワクチンを打っていない人が多くいることが、日本の園や学校でおたふく風邪が流行してしまう原因なのです。

おたふく風邪ワクチン接種により防げる難聴があることを知ってほしいのです。

おたふく風邪(ムンプス)難聴

おたふく風邪難聴の発症は、学童期の低学年に最も多いと報告されています。

沢山の情報を収集し、色々な人と交流し、様々な経験を重ねて、人生の基礎作りをしていく子どもにとって、耳からの情報が入って来ない難聴というハンディキャップは大変厳しいものです。

おたふく風邪にかかると、耳下腺や顎下腺などが腫れて痛みが出現し熱がでて、1週間くらい辛い思いをして治癒することが多いですが、おたふく風邪が原因で髄膜炎(1-10%)、膵炎(4%),睾丸炎(20-40%)、難聴(0.01-0.5%)などの重い合併症を起こすことがあります。おたふく風邪には上に挙げたように難聴以外にも重い合併症があるのです。

世界おたふく風邪ワクチン接種状況

界保健機関(WHO)によると2016年121ヵ国が、おたふく風邪により起こる重い合併症をなくすため、1歳時におたふくかぜワクチン1回目を、国によっては4歳から6歳時に2回目を接種しています。これらの国では、おたふくかぜによる難聴は過去のものになっています。

自然感染とワクチンの比較

ワクチンによる副反応を心配してワクチンを打たない選択をする人がいますが、ワクチン接種により起こる副反応発生率は、自然にかかることによって起こる合併症発生率と比べ下の表に示すように明らかに低いのです。

おたふく 自然感染による合併症発生率と予防接種による副反応発生率

学校保健安全法によりおたふくかぜの場合、耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後、5日間経過し、かつ、全身状態が良好になるまで登校停止と決められています。文部科学省は感染症対策として最も大事なのは予防であり、そのために予防接種を推奨しています。

集団生活に入る前までに、その年齢で接種可能な予防接種を受けることは、大切な子ども達が、予防可能な病気から守られ、登校停止によって教育を受け損なうことなくまた理由があり予防接種を受けられない仲間を守ることになるのです。

(K・N記)

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