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花粉症の舌下免疫療法

花粉症の舌下免疫療法

平成27年4月1日 発行分

花粉症は、植物の花粉が原因となって起こるアレルギー疾患で、花粉の飛散に伴って症状が現れます。日本ではその代表が、花粉症の約7割を占めるとみられるスギ花粉症です。
患者さんは働き盛りを中心に幅広い年代で増えており、最近の調査では、有病率が26パーセントと報告されています。
主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどで、鼻詰まりなどが夜間の睡眠を妨げることも少なくありません。

 

花粉症の治療法としては、花粉との接触を避けるセルフケア、対症療法としての薬物療法や手術療法、体を抗原に慣らして症状を起こりにくくする免疫療法などがあります。免疫療法では、経口薬による舌下免疫療法という新しい方法が認可され、選択肢がふえることになりました。症状を起こす原因である花粉のエキスを少しずつ体内に入れ、徐々に増量して、体に慣れさせていくことで過激な反応を起こさないようにさせる治療です。今のところ花粉症の根治の可能性がある唯一の治療法です。

 

舌下免疫療法は、やはり注射が不要というのが最大のメリットでしょう。1日1回、舌の下に薬剤をたらすだけで、痛みもなく自宅で行えます。治療期間は2年間は必要です。ただし、エキスは新薬のため、発売から1年間は2週間分しか処方できません。今年の10月からは、1ヵ月処方ができます。2年間治療すると、70から80パーセントの人は症状がなくなったり、軽くなっています。副反応は、口の中のかゆみや腫れ、違和感が、5パーセントほどみられますが、そのうちおさまることが多いようです。しかし、まれにアナフィラキシーの報告もあるので、注意が必要です。

 

この治療法を受けられない人は、重症のぜんそくがある人、自己免疫疾患がある人、治療開始時に妊娠している人、抗がん剤や全身性ステロイド薬、ベーター遮断剤を使っている人で、免疫療法は適しません。また、今のところ、12歳以上となっています。この治療法は、どこでも受けられる治療ではありません。日本アレルギー学会と日本耳鼻咽喉科学会による講習を受けて、登録された医師に限られることになっています。治療を始める時期は、花粉の飛散時期に始めることはできません。遅くとも症状が出る3ヵ月前から始めます。舌下免疫療法は、患者さんに強い意志と覚悟が求められる治療法です。

本当に治したいという気持ちがあるか、自分に適した治療法なのかを、事前によく検討し、十分に理解したうえで選択してください。

(K・I記)

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