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デング熱をもっと知っておきましょう

デング熱をもっと知っておきましょう

平成26年10月1日 発行

本年8月の東京代々木公園に端を発したデング熱ですが、約70年ぶりに国内での感染が確認され、その感染拡大が懸念されています。9月19日現在、デング熱患者数は141名にまで増加し、感染場所も新宿中央公園、外濠公園、上野公園と拡大を示しており、連日報道されるニュースに不安を感じていらっしゃる方も少なくないと思います。そこで、多少でもその不安を払拭するために、デング熱について現時点で知っておくべき情報をお伝えします。

 

デング熱は、デングウイルスに感染した蚊に刺されることで発症する熱性感染症です。今回日本で問題となっている蚊は、ヒトスジシマカという黒い虫体に白いスジが入っている、 草むらによく潜んでいるあの蚊ですが、デングウイルスに感染したヒトスジシマカに刺されない限り感染はしません。また、人から人に直接感染することもないと言われています。
ウイルスに感染した蚊に刺されてしまうと、すべての人が発症する訳ではないという報告もあるようですが、2~15日の潜伏期間を経てデング熱が発症してきます。多くの場合は、3日~7日で発症するようです。 症状としては、突然の高熱、頭痛、眼窩痛などの初期症状で発症し、強い関節痛、筋肉痛、全身倦怠感がみられるようになり、体幹、胸部から始まり四肢顔面に広がる発疹もみられます。

 

治療は特定のものがなく対症療法となりますが、注意していただきたいのは、発熱、痛みなどの症状に対し、アスピリンやロキソニンなどの消炎鎮痛剤を気軽に内服してはならないという点です。

アスピリンに代表される多くの消炎鎮痛剤には、血液中の血小板の能力を抑制して、俗に言う“血液をサラサラにする”効果があります。 ごくまれにデング熱では、出血症状とショック症状を主症状とするデング出血熱とよばれる致死的な病態が出現することがあるため(9月19日現在、今回の国内感染ではデング出血熱はみられていません)、血小板抑制効果を持つ薬剤の内服は避けるようにと言われています。

 

これらの理由から、デング熱の発熱、痛みに対しては、アセトアミノフェンの使用が推奨されています。現在市販されている痛み止め、風邪薬の中には、デング熱の治療には適さない消炎鎮痛剤が含まれているものもあるため、デング熱が疑われる場合は適当な薬を内服せずに、医療機関への受診をお勧めします。

 

しかし、日本国内でデング熱の感染が確認されたことは約70年ぶりであるということもあり、現在デング熱を迅速に確定診断できる医療機関は限られているのが実情です。よくわからないときは、かかりつけ医にどこの医療機関を受診すべきかを相談して、迅速な診断を受け、早期に適切な治療を受けられるように指示を仰ぎましょう。

 

発症後は約1週間程度で解熱し、ほとんどの場合、比較的良好な経過をたどります。ただごくまれに出血症状を示すことがあり、適切な治療を受けないと致死性の病気になることがあります。さて予防法ですが、この病気に対するワクチンは現時点ではありません。

 

個人で行える予防としては、蚊に刺されないようにするため、虫よけスプレーの使用、また長袖、長ズボンを着用して肌の露出を抑え、蚊の多い所には近づかないようにすることが賢明と言えるでしょう。

(Y・I記)

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